大相撲春巡業が始まり、4月6日に富山市総合体育館で開かれる「富山場所」も近づいてきた。復帰の春場所で三段目優勝した富山市出身の朝乃山がトークショーに出演するほか、横綱豊昇龍や、夏場所で綱とりに挑む大関大の里ら人気力士がそろって参加予定だ。
巡業は本場所と異なり、大相撲の迫力を間近で感じ、力士とふれあえるのが最大の魅力だ。取材やプライベートで何度も巡業に足を運んだ記者が、過去の巡業の写真を織り交ぜながら、より楽しむためのポイントを紹介する。
人気力士と握手
富山場所のスケジュールは次のように発表されている。
◆2025年4月6日(日)開場9時 打ち出し15時
9:00 開場〜公開稽古
12:00 幕下以下取組
13:00 初切・相撲甚句・太鼓打分
13:30 幕内・横綱土俵入り
14:00 幕内取組・弓取り式
15:00 打ち出し
※プログラムや参加力士は変更になる場合がある。
※当日券は午前9時から会場にて販売する。
取組時間に合わせて「昼前に行けば十分だ」というのはもったいない。巡業を満喫するのであれば「朝が勝負」。できるだけ早く会場入りすることを勧めたい。

朝の時間帯は人気力士が登場し、交代で握手をしてくれるのが通常だ。相撲で「ご当所」と呼ばれる地元出身力士が出るケースが多い。大勢のファンが並び、長い行列となるため、係員の「握手だけですよ~」という声が響く。
油性ペンや色紙をお忘れなく
会場に入ると、土俵上では幕下以下の力士が稽古を始めているはずだ。周囲には、関取と呼ばれる十両や幕内力士の姿もちらほら。この時間帯から取組開始の午前11時すぎまでが力士との距離が最も近い「ゴールデンタイム」と言える。

関取にもなれば、すぐに土俵に上がらず、土俵から少し離れたエリアでストレッチや基礎の四股、てっぽうなどで汗をかく。本場所ではライバル同士の力士たちが、リラックスした様子で談笑するなど普段と違う表情も見せてくれる。
この時だ。稽古中なのでタイミングを計る必要はあるが、運が良ければお目当ての力士と写真を撮ったり、サインをもらったりすることができる。色紙や応援グッズ、油性ペンの準備をお忘れなく。

巡業の初心者であれば、力士を顔写真入りで紹介している本「大相撲力士名鑑」(『相撲』編集部/編、ベースボール・マガジン社)や、あれば本場所のパンフレットを持参するといい。

上位の力士になればなるほど、ファンあっての大相撲、巡業がファンとの交流の場であることを知っている。中には「神対応」の力士もいて、さらにファンになったり、新しくファンになることもある。とりわけ、力士が子どもに優しく接する姿はよく見られる。

過去には自らページを開いて、本やパンフレットに力強くサインをしてくれる力士もいた。しこ名入りの応援タオルにサインをお願いするときは、左右からピンとタオルを引っ張ると書きやすいようだ。


呼びかけは「○○関」と
注意したいのが力士の呼び方だ。十両以上の力士は関取と呼ばれ、しこ名で呼び捨ては失礼。「○○関(ぜき)」と声を掛けたい。関取の場合、近くに付け人がいるため、付け人を通じて写真やサインを依頼する手もある。状況によって断られたり制止される場合もあるが、マナーを守り、しつこく深追いするのは慎みたい。

午前10時前後になれば、土俵まわりに三役や大関、横綱が姿を見せ、稽古は一気に熱を帯びる。ファンとの交流もいったんお休み。申し合いやぶつかり、時にはかわいがりなど土俵上で繰り広げられる熱い稽古に注目したい。通常であれば、「ご当所」の力士が番付上位の力士に指名され、稽古をつけられることが多い。
豊昇龍が横綱土俵入り披露
化粧まわしを着けての土俵入りや横綱土俵入り、幕内取組が始まると、流れるように時間が過ぎる。

今回、横綱として初めての巡業となる豊昇龍は、攻めと守りの両方を備える「雲竜型」の土俵入りを披露する予定だ。

結びの一番を終え、弓取式が行われると時計はもう午後3時。巡業の終わりを告げる「跳ね太鼓」の音が響く。
巡業の席は隣同士が近く、脱いだ靴を入れておくための十分なスペースもないため、荷物は最小限にしたい。会場内を動く際は、脱ぎ履きに時間がかかるシューズより、ぺたんこにつぶせるスリッパのような履き物が重宝する。富山の桜も開花した。お互いが気持ちよく観戦できるようマナーを守り、楽しい思い出にしてほしい。