エントランスを彩るのは立山町の和紙職人・川原隆邦さんの革新的な作品だ。
土や花びらなど各地の素材を和紙と融合させ、伝統工芸の固定観念を打ち破る新たな表現に挑む。
4月13日の万博開幕を前に意気込みを聞いた。(聞き手・田尻秀幸、撮影・竹田泰子)
——万博と関わることになった経緯は?
もう記憶があいまいなんですけど、2、3年前くらいかな。まだ万博がざわついていない時期から自分の和紙で建築に関わりたいと思って、つてをたどりました。僕の仕事の9割以上が建築関係なんですよ。公共施設やオフィスビルの壁や柱に和紙をあしらって、空間をつくってきました。万博っていろんな建築家が集まって、パビリオンを作るじゃないですか。そこで和紙を生かした面白い提案や世界観を出せたら自分の仕事の幅も広がると思っていたんです。

縁があって会場デザインプロデューサーの藤本壮介さんの事務所に行ったら面白がってくれました。和紙の可能性とか未来とか、いろいろな話をして盛り上がった。それで1年半前くらいに「迎賓館で作品を展示してみませんか」っていうオファーがありました。
——自分から手を上げたんですね。
最初はそうですね。万博は世界ですしね。僕はずっと海外に発信したかったけど、万博って世界の方からこっちに寄ってきてくれるわけでしょう? こんなチャンスはない。万博という舞台を使わない手はない。

やっぱり、やるなら負けたくないんですよ。僕は千葉の中学校でサッカーをやっていたんです。かなり強豪校で、プロとか日本代表を意識しやすい環境でした。そのせいで和紙を始めた頃から、勝負したかった。だから世界は意識していました。
——迎賓館のエントランスで展示するそうですが、どんな作品なんですか。
迎賓館は会期中に何十カ国もの賓客が来る場所です。他のパビリオンとは少し意味合いが違うかもしれませんね。一般のお客さんは入れませんが、世界のVIPにアピールできる。今回、日本の四季をテーマに、7地域の素材を使い、それぞれ1点ずつ、計7作品を制作します。会期中に制作しながら、展示作品を変えていきます。大変だけど、現地で働いている人もずっと同じものが飾ってあるよりはいいでしょう(笑)。

取り上げる地域は北海道、山形、東京、富山、岡山、京都、沖縄ですね。例えば北海道だと十勝の土と牧草を使います。山形はベニバナ、東京はツバキの花びらを使います。富山は酒米を材料にします。磨いた米は丸くなっていて「これが米なの?」って感じで面白いんですよ。沖縄の作品は石垣島に行って海水を使って作りました。