街並みをミニチュア風に撮影した動画を発信し、1年強の活動で
インスタグラムとThreadsの総フォロワー数は8万人に達した。その8割が海外からのファンだ。
元看護師の彼が、なぜ日本の地方都市の風景を世界に向けて発信するようになったのか。
その経緯と展望を聞いた。(聞き手・田尻秀幸、撮影・竹田泰子)
——ミニチュア風の撮影というと、十数年前に本城直季さんというカメラマンの作品が話題になっていましたよね。その影響はありますか。

本城さんについては、この活動を始めてから知りました。僕はむしろイナガキヤストさんの影響が大きいです。作風というよりも、SNSから生まれた写真家として行政や企業との関係を構築していった姿は一つのロールモデルです。サウナでもよく会うんですよ(笑)。イナガキさんがスチールなら、僕はムービーで富山を発信していきます。
——もともとは看護師をされていたそうですね。
自分の手の中で人が息を吹き返したり、亡くなったり。責任が重い仕事で確かにやりがいがありました。ただ資格のおかげでいつでも戻れます。「保険」があるからこそ新しいことにチャレンジできました。
——映像制作を始めたきっかけは?

2020年のコロナ禍で時間ができて、YouTubeで映像クリエイターの動画を見るようになりました。彼らはそこまで特別な機材を使ってはいないのですが、意外な視点で見たこともないような映像を表現している。オズモポケットという小さなカメラを買って試し撮りをして遊んでいたら、「これでいけるのでは」とひらめきました。世界にも届く動画が撮れる気がしたんです。
——撮影技術はどうやって磨いたんですか?
映像を始める前に、写真の勉強から始めました。1枚の絵としてきれいな映像を撮るために、有名な写真を集めた分厚い写真集を読んで、審美眼を養いました。動画も写真も結局は構図です。僕は写真を撮らないんですが、構図の基本を学ぶことで後の映像制作に生かせると考えたんです。もともとバンドをやっていて音楽が好きで、ミュージックビデオもたくさん見ていたんです。その蓄積が生きていると思います。
独学でノウハウを身に付け、美容師向けの映像制作から始めました。美容室はコンビニより多くあって、みんな写真だけを投稿している。そこに動画で差別化できると考えたんです。

最初は無料で撮影させてもらい、実績を作っていきました。すると動画を撮影してほしいというお店が口コミで増えました。でも、最近はそういった動画はあまり撮っていません。どうしても修正依頼が多いので手数が増えて時間を消耗するので。今は「じおらま富山。」というアーティストとしての活動に力を入れていますから。
——ビデオアートがSNSでバズることだけでは直接的な収入にはならないでしょう。
はい。でも行政や民間企業からの依頼で「じおらま富山。」的な動画を撮影する仕事が舞い込み始めています。これも想定していたことではあるんですが、思っていたよりも早く収益化が進んでいます。
——これからの展開は?
実は「じおらま富山。」は3本の矢の1本目なんです。2本目は特殊なレンズを使った新しいコンテンツ、3本目はスチール写真。もう次の準備を始めています。でも今は「じおらま富山。」です。これを最後まで絞り切ってみたいですね。