今年のエミー賞(アメリカで放送されるテレビ番組などの功績に与えられる賞)が発表された。日本人俳優が受賞し話題となった授賞式中継を、偶然だが県外にいる妹と一緒に観て盛り上がった。しばらくして、妹のSNSを見た。「コロナ禍でストレスを抱えていた私に配信ドラマを勧めてくれた姉と、一緒にエミー賞を観られたのがとてもよかった」とつづってある。私も同じことを感じていたので少し照れた。姉妹にも”シスターフッド”ってあるのだ。

 シスターフッドという言葉は「女性同士の連帯、親密な結び付きを示す概念」と訳される。姉妹はもちろん、血縁にない他者や立場の異なる人がきずなを深め、さまざまな理想や目的に向かうという場面で、映画や小説でよく使われる。

イラスト:kumiko yamaguchi

 「極悪女王」もシスターフッドを描く。1980年代に一大旋風を巻き起こした女子プロレスの悪役(ヒール)レスラー”ダンプ松本”の困難や葛藤、仲間たちとの友情を描いた青春ドラマだ。

 香(ダンプ松本)は、酒乱の父親のせいで、妹と母と貧しい暮らしを強いられていた。何もかも嫌になり家を飛び出したある日、女子プロレスラーたちの練習場面に遭遇。それ以来、女子プロレスのファンになった彼女は自身もプロレスラーになりたいと決意し、オーディションを受けることを決意する。

 香と合格した同期生たちは、先輩のいじめに耐え、会社の命令に振り回されながらもデビューを夢見る。とりわけ仲良くなったのは、香と同じく家庭環境に悩み、共に落ちこぼれとされていた千種だった。ところが、千種は同期の飛鳥と「クラッシュギャルズ」を結成し、ベビーフェイス(善玉)レスラーとして頭角を現す。香の焦りに乗じ、会社は彼女にヒール役をたきつける。

 親友だった香と千種は、会社が仕組んだこととはいえ、敵対する相手となった。血まみれになっても、生きづらさを抱えた2人が自由でいられる場所は、リングの上だけだとわかっている。強くなり「観客が喜ぶ良い試合を見せたい」と志を持つ仲間であることに変わりはない。

 第3話、クラッシュギャルズの歌う「炎の聖書」に、シスターフッドを表したような歌詞がある。「ひとつの夢で結ばれた/きょうの俺達/ひとりじゃみれない/夢もつかめるさ」

 私と妹は見た目も性格も正反対。でも、結び付いたものもある。「極悪女王」を勧めたら、また楽しんでくれるだろうか。

DJ CHIGON 富山市在住。ロックDJパーティ「LOVEBUZZ」のDJ。インディーロックを中心にプレイしている。