SNSに映画やドラマに関する投稿を控えるようになった。作品名を検索すると好意的な感想で占められる一方で、否定的な感想は他者からバカにされたり、攻撃されているものが目立つからだ。
「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」は、過去に犯した罪で実刑を受けた女性と、刑務所の受刑者たちとの日々を描いた群像劇だ。 ニューヨークの中流家庭で不自由なく育ったパイパーは、生活雑貨のブランドを立ち上げ婚約し、順風満帆な人生を歩んでいた。ある日、10年前に薬物密売人の恋人を手伝ったことで起訴され、15ヶ月の懲役 刑を受けてしまう。戸惑う彼女を待っていたのは、同性の元恋人アレックスをはじめとする、個性の強い受刑者たちだった。
婚約者に見送られ、泣きながら入所したパイパーは、初日に失言してしまい、受刑者たちの怒りを買う。「ここでは“ごめん”も“お願い”も通用しない」と突き放されるが、持ち前の賢さを発揮しピンチを切り抜けていく。

しかし、決して彼女の肩を持ちたくなるような作品ではない。厨房長レッドが作った食事を「クサい飯」呼ばわりし、刑務所見学に来た少女を「ここに入れば最後、クソ女になっていく」と脅かす。婚約者とのいざこざに嫌気が差し、憎んでいたアレックスと再び関係を持つなど、口の悪さと腹黒さをあらわにする。
他の受刑者たちも同様に様々な面を見せる。
パイパーの失言に幼稚な仕返しをするレッドは、薬物中毒受刑者たちを決して見捨てず、情が深い。アレックスはパイパーを裏切り密告したが、ずっと彼女に未練がある。
テーマ曲であるレジーナ・スペクターの「You've Got Time」は、そんな人間の多面性を表したように聴こえる。「人生には様々な道があって/どんな道にも交差するものがあるかもしれない/みんなの顔と声を思い出して/全てが異なる」。互いの悪事や嫌がらせが発覚しても、受刑者たちは肯定も否定もせず、刑務所内で共存し続けている。
私も好きな作品を否定されると確かに傷つくが、褒めるものが多いとなんだか居心地が悪い。とはいえ、否定的なものを見つけると、作品の良いところを上げたくなってしまう。「感想なんだから、人それぞれ」と言い聞かせてはいるが、SNSに「下書き」ばかり増えていく。