音楽や映画、ファッションにおいて「90年代」が再評価されるようになって久しい。私がその時代を過ごしたことは、若い友人がうらやましがる出来事のひとつだ。
「アンダー・ザ・ブリッジ」は、1997年にカナダ・バンクーバー島で起きた実話を基に創作した、クライム・サスペンス。 14歳のリーナはパーティーに出かけ、そのまま帰らぬ人となった。事件を調査する警察官カムは、帰省していた幼馴染でジャーナリストのレベッカに、犯人を突き止めるため10代のギャンググループ「CMC」へ潜入取材をするよう助けを求める。
学校でいじめられていたリーナは、友達欲しさに「CMC」に入ることを切望するが、厳格な両親はそれを許さない。その結果、リーナは父親を追い詰める行動を起こす。レベッカに「この街から連れ出してほしい」とせがむリーダーのジョセフィーヌ、父親が蒸発し住み家を失ったウォーレンら、狭い街で暮らす窮屈さや親に支配される苦痛をメンバーの皆が抱えていた。

潜入取材で信頼を得たレベッカは、情が移った容疑者をかばう。「リーナのための正義がほしい」と説得するカムに、彼女は「人は、しなければよかったと思うことをするもの」と罪を正当化しようとする。
「90年代」は学校と家だけの小さな世界で過ごす10代にとって、友情と家族関係を築くため嘘が必要だったことを思い出した。私もリーナのように、本当はそんなに好きじゃない友達と遊ぶために、良心を痛めることがたくさんあった。
第6話で流れるエリオット・スミスの「Between The Bars」には、「もう一緒にいたくない、忘れたくても消えない人々の記憶を/わたしが遠ざけておいてあげよう」と歌われている。
たしかに「90年代」はカルチャーが豊かだった。けれど、SNSやインターネットで友達と居場所が見つかる2020年代も、違う意味で豊かだと思う。本作を観てから、少しだけ若い友人がうらやましくなり、「もし私がいま10代だったら」と想像している。