昨季から富山グラウジーズの試合に何度も足を運んでいる。実際に試合を観戦するまで、ここまで楽しいものだとは思っていなかった。以降、バスケに関するニュースサイトや番組をこまめにチェックしている。

 「ステフィン・カリー:アンダーレイテッド」は、現代バスケに大きな影響を与えたアメリカ人選手、ステフィン・カリーのドキュメンタリー。全く期待されていなかった彼が、所属チーム・ウォリアーズの4度目となるNBAファイナルを制するまでを描く。

イラスト:kumiko yamaguchi

 NBA選手の大半は学生時代からトップチームに所属し活躍するが、カリーはそうではない。小柄な少年時代を「つい自分ができないことばかり考えたくなるが、得意なシュートで貢献した」と話す。高校2年でシュートフォームを改造すると、強豪とはいえないが地元大学のチームから声がかかる。ここでのコーチとチームメイトとの出会いが、彼の大きな転機となる。

 大学デビュー戦でミスを多発したカリーを、コーチは「きみは素晴らしいプレイヤーだ」と起用し続ける。自分を信じるコーチに応えるように、彼は得点を量産する。勝ちを重ねると、チームメイトも実力以上のプレーを発揮する。「独りでは何もできない。チームの自信は強大な力だ」と、痩せっぽちなカリーの活躍はチームだけでなく、街の住民も鼓舞していく。

 エンディングで流れるトベ・ンウィーグウェの「Lil Fish, Big Pond」には、今に至るまでの活躍を代弁するような歌詞がある。「私を選ばなかった人たちは/私と対戦するとき/私を恋しく思っていることを知る」。

 2021-2022年シーズン後半、ウォリアーズが4連敗を喫した試合後のインタビューがとても印象的だった。カリーは「負ける理由を探してしまう、敗者のメンタリティに陥るわけにはいかない」と話す。彼は幼い頃から常に肯定的な部分を見つけ出そうとしているのだ。これはプレイヤーだけでなく、私たちブースターにも通ずる。なぜ勝てないのか、そればかり考えるシーズンは昨季で終わりにしよう。若手選手4名の契約更新や富山市総合体育館の改修、まだまだうれしいニュースは続く。

 タイトルの「アンダーレイテッド」とは「過小評価」を意味する。グラウジーズは昨季、最下位となり、B2に降格した。2016年のリーグ発足後、B2で戦うのは初めて。今季の活躍で、「アンダーレイテッド」だと示してほしい。

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DJ CHIGON 富山市在住。ロックDJパーティ「LOVEBUZZ」のDJ。インディーロックを中心にプレイしている。