夏といえばカブトムシやクワガタと出合える季節。里山育ちのわりには昆虫が苦手な記者と、昆虫好きの先輩記者のコンビが、”聖地”として名高い「昆虫王国立山・立山自然ふれあい館」(立山町四谷尾)を訪ねた。海外原産のヘラクレスオオカブトや放し飼いにされたカブトムシに近づいてみると、ジェットコースターのような感情の起伏が待っていた。

いつから生き物が苦手に?

 なぜ、生き物を愛せなくなったのだろう。記憶をたぐり寄せるが、きっかけは覚えていない。

 農家に生まれ、南砺市の旧村部にある実家は最寄りのコンビニまで車で5分かかるくらい自然豊かなのに。幼い頃は近くの川で魚や沢ガニを捕ったり、メダカを育てたりしたのに。それなのにどうして? 大人になるにつれて潔癖症気味になったことも影響しているのだろうか。とにかく、もうずっと昆虫からは遠ざかっている。

 正直言って、今回の企画は気が重かった。昆虫王国の大江茂館長には、取材のために時間を割いていただいている。あまりに嫌がるのは失礼だろう。けれど、怖いものは怖い。自分の手足や体がどれほどカブトムシに近づけるか、未知数のまま展示室に足を踏み入れた。

先輩からのむちゃ振り

 大江館長はまず販売用のクワガタを見せてくれた。先輩に促され、虫かごを持ってみると、背筋が少しぞわぞわしたけど、プラスチック越しの接触は問題なかった。

プラスチックケース越しに撮影する記者(左)

 そして海外原産のカブトムシやクワガタが並んだコーナーへ。世界最大と称されるヘラクレスオオカブトの前では、先輩からの指令の難易度はさらに上がり、止まり木をつかむことになった。刺激しないように、館長からそっと受け取る。……あれ? こんな感じ? 指先まであと数センチという距離まで迫っているのに、意外に平常心を保てる。

世界最大とされるヘラクレスオオカブト

 「小さいころとか図鑑で見て憧れるんですよね」と先輩が大江館長に言っていたのだが、私にとってヘラクレスオオカブトは、自身の常識や経験の枠外にいる存在なのかもしれない。有名だから映像や本で知識としては知っている。けれど、実物と出合っても現実感が沸かずに心は高ぶらない。もしかしたら、タレントの恵俊彰や俳優の中山忍が目の前に現れたら同じような感情を持つかもしれないと思った(ファンの方、すいません)。

蛍光色に胸がときめく

 隣のニジイロクワガタも同じようなものだろう。どこか冷めた気持ちで再び止まり木を持ったのだが、深みのある蛍光色のグリーンに胸がときめいてしまった。

残り943文字(全文:1993文字)