連日うだるような猛暑で、冷えたビールがたまらない。富山県内のホテルは、週末を中心にビアガーデンが大にぎわいだ。そこでビアガーデンや居酒屋で飲む生ビールの満足度とコストパフォーマンスを記者が経済学的な手法でひもといた。近代日本経済の父、渋沢栄一の新札も発行されたことだし、身近な話題で経済に親しんでみよう。今後、たくさん「お顔」を眺められんことを祈りつつ…。

ミクロ経済学の手法
世の経済活動の主体は、大まかに個人(家計)、企業、政府、中央銀行(日銀)の四つがある。経済学では、政府が担う減税や公共事業、中央銀行が行う利上げから物価、GDPといった国全体の景況を考える「マクロ経済」と、企業や消費者といった個別主体が利益(満足度)を最大化するための行動を分析した「ミクロ経済」がある。経済・商学部出身の人は聞いたことがあるかもしれない。経済学を山の自然環境に例えると、マクロ経済は気候変動や森林開発などの要因から山全体の環境保全を考えるイメージ。ミクロ経済は山に生えている木や野生動物の生育状況に目を向け、山岳環境をひもとくようなものか。最近は平野でクマの出没が相次いでいるが、そうしたクマの行動から山の環境実態を分析するのも一例といえよう。
昨今の金融事情に目を向けると、物価高を招く円安に歯止めをかけるための追加利上げの功罪が議論されている。経済成長が停滞する中で利上げに踏み切れば、個人消費や中小企業の資金繰りに与える影響も指摘されている。マクロ、ミクロ両視点からの慎重な分析が必要となりそうだ。
今回は私たちにとってより身近なミクロ経済学の「効用」という手法でビールのおいしさについて考えてみたい。聞き慣れない用語だが、簡単に言うと個人が感じる満足度の総計のことだ。
1杯の価値はだんだん下がる
ビールで一番おいしいのは1杯目! これは論をまたない。その後、2杯、3杯と飲み進めるうちに、ほろ酔い気分で満足度の総計は上昇するが、1杯当たりのおいしさの度合いはだんだん下がってくる。

ここで「限界効用」というものに着目したい。