桜が咲き誇る季節がいよいよ到来です。「富山の桜博士」と呼ばれる大原隆明さん(富山県中央植物園研究員)が、野生種と栽培品種の違いや桜を愛でる文化の変遷を解説し、おすすめのスポットもたっぷり紹介してくれました。(小川剛)
※富山市立図書館で開かれた講演会「桜と日本人」を基に構成しました

富山は野生種が多い県
サクラはバラ科サクラ属サクラ亜属の総称なので、実は「サクラ」という植物はこの世にはありません。バラ科と知り驚かれる方も多いですね。野生種と栽培品種に大別できます。
野生種は人の手を借りずに生育したもので、1本ごとに個性があります。北半球の温帯で約60種が生育しており、最も種類が多いのは実は中国なんです。日本人が盛んに鑑賞したり園芸品種をつくったりしたため、日本の花というイメージが定着しました。
国内には14種の野生種のサクラが生育するとされます。富山県はヤマザクラやエドヒガンなど8種類が自生し、静岡県、東京都と並んで国内で最も野生種が多い地域といえます。

一方、ソメイヨシノ、カワヅザクラなどの栽培品種は、人による選抜や交配で誕生しました。接ぎ木や挿し木で増え、同じ遺伝子を持つ「クローン」といえます。
ソメイヨシノは、富山市の松川べりなどで広く親しまれています。1700年代に江戸・染井村の植木屋で誕生したという説があります。江戸を中心に限定的に生育する種だったのですが、東京大学の松村任三(じんぞう)が1901年、新種として発表したのを機に広く知られるようになりました。松村は、朝ドラ「らんまん」の徳永助教授のモデルとなった人物です。さらに、日清・日露戦争の戦勝を記念し全国で植樹され、一気に広がりました。
