能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県輪島市に、カメラマンとして足を踏み入れた。目の前に広がったのは、震災直後から時間が止まったかのような悲惨な光景だった。今できることは「輪島の今」を伝えること。その思いを胸にシャッターを切った。
1月下旬。まず向かったのは被害の大きかった輪島市門前町の沿岸部だ。震度7の揺れで海底が隆起し、海岸線が沖合に数十メートル動いた。白く見える部分は元は海中だったという。

地震前の鹿磯漁港(ⓒGoogle Earth)
鹿磯漁港は約4メートル隆起し、数隻の船が座礁していた。岸壁が海底まで見える光景は異様だった。震災前の写真と見比べると海面の高さは一目瞭然だ。

海底が露出し、座礁した船が見える鹿磯漁港
近くに住む大山道男さん(74)は「海岸線から潮が引き、大きな津波が来る覚悟をした。この辺りはもう漁ができん」とぼやいた。

安否不明者の捜索が続く土砂崩れ現場=輪島市市ノ瀬町
市街地へ車を走らせると、山あいの市ノ瀬町で大規模な土砂災害現場が目に入った。土砂が崩れたと見られる斜面は「スキー場」のように映った。

懸命に活動する消防隊員ら
消防隊員ら100人以上が泥だらけになりながら安否不明者の捜索活動に当たっていた。服装や重機から大阪や兵庫から駆けつけた隊員と分かる。終わりのない活動に頭が下がった。

根元から横倒れになった7階建てビル=輪島市河井町
河井町に移動し、7階建てビルの倒壊現場を訪れた。根元から倒れたビルは揺れと衝撃の強さを物語る。今回の輪島取材の象徴的な
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