「耳が聞こえないので怖かった」。聴覚障害者の富山県西部出身の女性(25)は帰省中に能登半島地震に遭った。発生時は家族と一緒に買い物中だったため、無事に実家まで帰ることができたが、「状況によっては聞こえないことで逃げ遅れていたかも」と不安を募らせ、「今回の地震を教訓に自治体でしっかり議論して、次の災害の時に生かしてほしい」と願った。
※11月5日の津波防災の日に合わせ、2024年2月7日公開の記事を再掲します。

障害者の避難想定を

 地震から1カ月以上経過した今、女性は「災害発生時の障害者の対応はまだ多くの課題がある」と感じている。「災害時は健常者だけでなく、周りの助けを必要とする障害者も避難してきます。特に聴覚障害は外見から分かりづらい。周りからは健常者のように見えてしまい、大丈夫と思われがちです」と指摘する。

 聞こえないことで、適切な情報や支援を得られない可能性もある。そのため「筆談対応や掲示板にふりがなも付け加える(特に高齢の障害者は漢字が読めない人もいます)など、情報のサポートをしてもらえると嬉しい」と期待する。

楽しい時間が暗転

 女性は重度の難聴で補聴器と人工内耳を外すと全く聞こえず、着けるとある程度の音は聞こえる。現在は北海道で会社員として働いており、地震が起きた1月1日は実家に帰省中だった。父親と姉の3人で県西部の商業施設を訪れ、女性の誕生日プレゼントを選んでいたが、激しい揺れで楽しいひとときが暗転。

残り628文字(全文:1397文字)