まずは元日に発生した能登半島地震で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。東京のメガバンクを辞めて富山に移住した中谷幸葉なかやこうようです。射水市の古民家は食器の落下や壁のひび割れ程度で済み、地域の方々にも助けてもらって復旧しました。改めて人の温かさやコミュニティーの絆に感謝する年明けとなりました。

地震の影響で古民家の食器が割れ、壁にひびが入った

 自分たちにできることは、古民家から富山に元気をもたらすための発信です。えとのたつにちなみ、昇り龍のように、志高く頑張りたいと思っています。引き続き、コラムを読んでもらえると幸いです。

美容師で世界一、異色の絵本作家

 古民家には、毎月大きな志と悩みを持った人からお便りが届きます。今回は珍しく、芸術家からの相談です。「芸術家のスキルを使って、大人がワクワクできる仕掛けを作れませんか?」

異色の経歴を持つ絵本作家の開発さん

 投げかけてくれたのは、開発かいほつ欣紀よしきさん(30)です。現在は絵本作家として活動しています。開発さんは元美容師で、世界大会のチャンピオン記録保持者という異色の経歴の持ち主。初作品の「髪切り屋のテトテ」は、絵もストーリーも自作で、美容師時代の経験や夢などさまざまな思いが詰まっています。

開発さんのホームページはこちら

開発さんの初作品「髪切り屋のテトテ」

 開発さんは美容師の大会で優勝した後、オーストラリアへ渡ります。その後、カナダに移住して、ラーメン屋とホットドッグのキッチンカーでバイトをしていました。ラーメン屋で働く就労ビザを更新するために、日本に一時帰国したタイミングで新型コロナウイルスが流行。ロックダウンでカナダに戻れず、何もできなくなってしまった時に、ふと絵本の物語が浮かんだと言います。

開発さんはタブレット端末で絵を描く

 タブレット端末にイメージする絵を描き、「クラウドファンディング」で資金を集め、少しずつ絵本を形にしていきました。まさに逆境の中で生まれた物語です。その後、富山に戻って作家活動をしながら、カナダでの経験を生かして絵本に出てくるホットドッグ屋をオープンしました。「絵本の中から飛び出したごはん」がコンセプトです。

個性的な開発さんのアート作品

 異色の経歴で何事にもチャレンジする開発さんですが、ある悩みを抱えていました。アーティストとして、今後の活動をどう広げていくかの壁に直面していたのです。「制作したアート作品を売り上げに変えるためにはどうしたらいいでしょうか」。そう簡単な話ではありません。

企業成長と社会貢献「白黒」を両立

 開発さんから相談を受けたころ、時を同じくして、木こりの斎藤李樹さん(32)と、左官職人の中村健介さん(29)からもお悩みが寄せられていました。

木こりの斎藤さん(右)と左官職人の中村さん

 斎藤さんは木こりという仕事に誇りを持っています。ただ労働は過酷で、木材価格が下落する中、なり手不足も深刻です。「これからは木を切って売るだけじゃないビジネスモデルを見つけたい」と夢を語ります。

チェンソーで木を伐採する斎藤さん

 もう一人の中村さんは和菓子職人や自転車日本一周などの経験を経て、現在は左官職人をしています。左官とは外壁や土壁などにコテを使って漆喰やモルタルを塗る仕事です。職人としてすごくやりがいがある一方、業界の認知度が低く、担い手不足もあって、なかなか表に出ない職業と言います。

コテで壁を塗る中村さん

 開発さん、斎藤さん、中村さん、3人の話を聞いて、またまた「ピコーン」と思い付いてしまいました。第1次産業の木こり、2次産業の左官、3次産業のアートの領域でチームをつくろう。3人のスキルを掛け合わせたら、何か地球に優しいプロジェクトができそう。こうして立ち上がったのが、「ゼブラーマンズ」プロジェクトでした。

ゼブラーマンズのキービジュアル。シマウマが格好いい

 企業成長と社会貢献を両立している企業のことを、白黒どちらも取っていくという意味で「ゼブラ企業」と呼ぶそうです。それにあやかって名付けた「ゼブラーマンズ」プロジェクト。これからの時代は

残り1065文字(全文:2760文字)