webunプラスをご覧の皆さま、はじめまして。東京のメガバンクを辞めて富山に移住しました中谷幸葉なかやこうようと申します。現在30歳です。射水市の古民家で暮らし、仲間からはなぜか「村長」と呼ばれています。

メガバンクを辞め、古民家に移住した中谷さん

 東京時代と比べ、富山での生活は一変しました。

移住先となった古民家
 

 最初は驚きの連続でしたが、地域の人に恵まれ、今では富山が大好きになりました。

古民家は築100年、田畑4000坪

 築100年、4000坪(畑と田んぼ含む)の古民家で暮らすきっかけは、この古民家のオーナーとの出会いでした。

古民家の周囲には田畑が広がる

 古民家は、2014年に結成された地域のボランティア団体「きららかネットワーク」が活動拠点としていた場所でした。竹林整備などを通して、住みやすい地域を次世代につなぐことを目的とし、古民家再生と地域社会の活性化のために活動をしていました。

 しかし2022年12月、会員の高齢化に伴い、活動の継続が困難となり、活動休止が決まりました。空き家となってしまう古民家の利活用と地域社会へ貢献の思いをたまたま引き継ぐことになったのです。

草との格闘は予想以上の重労働だった

 当初は富山市中心部で暮らしていたのですが、自ら射水市の古民家に住んでみることにしました。広い土地での田舎暮らしにワクワクしていましたが、現実をみて衝撃を受けました。古民家はとにかく「草、草、草!」。住める状態にするには、一人ではとても無理だと悟りました。

前代未聞の「ドキュメンタリー」

 初めての草刈り、古民家の片付け、地域の悩み解決など古民家で起きる良いことも、悪いことも日常として発信していこう。古民家に関わる全てを「みんなとつくりあげる」をコンセプトに、前代未聞の「ドキュメンタリー」が始まったのです。

草刈りの後は古民家の後片付け

 活動をSNSに上げたところ、どんどん仲間が増えていきました。農家や木こり、建築士、木登りの達人、魚突き士、絵本作家、花屋さん、インフルエンサー、ユーチューバー、会計士、ドローンの達人、サウナ屋さん、企画屋さん、コピーライター、カメラマン、ダンサー、左官職人、お坊さん、美容師、プロマラソンランナー、100メートルの元富山県記録保持者…。挙げだすと切りがありません。

「とやまのめ」のメンバーと打ち合わせ

 いろいろな得意を持った人たちが古民家に集まり、それぞれの得意を掛け合わせて、地域の課題を解決したい。活動の輪が広がるごとにみんながそう思うようになり、2023年3月27日に一般社団法人「とやまのめ」を設立しました。

地域をイキイキ「とやまのめ」

 団体名の「め」は、目であり、芽。台風の目のように周りを巻き込んで自分のイキイキを広げていく存在、イキイキの芽を地域にまいていく存在との思いを込めました。

 

 コアなる思いや価値、スローガン、ロゴなどについて、みんなで話し合いながら「あーでもない」「こーでもない」と柱を決めていきました。

 

 活動を進めるうちに、SNSを通して地域のお悩みが古民家に集まるようになりました。ここはまるで、ゲームの「モンスターハンター」で言う集会所か!と思いながらも、課題の解決に取り組みました。

地域の人から課題が持ち込まれることも

 最初に届いたお便りが、「地域のシンボルツリーの復活」でした。この古民家では、ボランティア団体がシンボルツリーにライトアップを施し、クリスマスツリーとして毎年点灯していたのです。地域の人たちはそれを楽しみに、この場所に昔から集まっていました。

ツリー点灯でチームが一つに

 マンパワー不足で最後の点灯となった2015年。あるおばあちゃんが「こんなに心の温まった瞬間はないよ」と涙を流されたという話を聞いて、胸が熱くなりました。

 地域の方々から直接、「もう一度このツリーを点灯できないか」と相談を受けたのは2022年の秋でした。熱意に打たれ、みんなで取り組むことにしました。

シンボルツリーを前に記念撮影

 と言っても、自分たちにできることは少なく、誰かの力を借りることでしかこのクリスマスツリーを点灯することはできません。草刈りの時と同様、SNSで「助けてください!」と投稿したところ、先に紹介した仲間が集まってくれたのです。

無事に成功したライトアップ

 ツリーを照らすライトは計78個集まり、木登りの達人が木に取り付けてくれ、木こりが危なくないように周辺を整備し、農家チームが当日のイベントを盛り上げてくれ、当日はなんと120人が来てくれました。

 何よりもうれしかったのは、最後の点灯時に涙を流したおばあちゃんから言われた「ありがとう」の一言でした。

 こうやって地域のお悩みを一つ一つ解決していくことは、「とやまのめ」というチームが団結していく瞬間でもありました。

次なるお悩み相談が続々と

 余韻に浸っている暇はありません。掲示板には次なるお悩みがどんどん上がっていきます。「耕作放棄地の拡大」「農業の担い手不足」「地域スポーツクラブの役割」「食育」などなど。これらの課題解決に立ち上がったのは、キャベツを育てるために富山に移住してきた若者と、100メートルを10秒32で走るアスリートの実業家でした。

次の課題はキャベツ農家が解決へ

 このほかにも、多士済々のメンバーが数々のプロジェクトを進行中です。次回はどんなお悩み解決をお届けできるでしょうか。お楽しみに!

射水市の古民家に集まる「若者・よそ者・ばか者(?)」のメンバーが、日々の活動をリレー方式で紹介していきます。随時掲載します。
〈著者プロフィル〉
 
 

中谷幸葉(なかや・こうよう)
1992年、茨城県生まれ。「とやまのめ」代表理事。現在、55人のメンバーと社会課題の解決プロジェクトを進行中。まちづくり会社TOYAMATO取締役。M&Aアドバイザリー業務も行っている。 

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