都会の喧騒の中では周囲の視線を気にしなくていい。派手な服を着ても「どこにでもいる人」として街に溶け込める。その快適さゆえに感じる孤独はどこか心地が良い。

 本作はニューヨークの高級住宅地を舞台にしたコメディタッチのミステリー。高齢者2人と若者1人が自分たちの住むアパートで起きた事件の謎を解き明かすため奮闘する。

イラスト:kumiko yamaguchi

 俳優チャールズと演出家オリバー、2人の孫のような年齢のメイベルは、ある住人の死がきっかけで、同じポッドキャストの実録犯罪番組のファンだと知る。番組を真似るように推理し、その過程を収録し始めた3人はやがて事件に巻き込まれていく。

 チャールズは家族も友人もおらず、オリバーは息子や孫と別居中。メイベルは叔母不在の部屋に独りきりで、被害者と犯人を含め、住人ほとんどの人間関係が希薄。みんなが孤独を感じている。

 推理を続けるうち「同じ建物の住人」でしかなかった3人は過去や家族との軋轢について打ち明け、関係を深める。探し当てた犯人に銃口を向けられると、チャールズは「撃つなら私を撃て。彼らのいない世界は意味がない。失っていた私の一部を取り戻してくれた」と言い放つ。独りきりだった3人に友情が芽生えていたのだ。

 シーズン2第6話のエンディングで、アメリカのシンガー、メイヴィス・ステイプルズの「You Are Not Alone」が流れる。「あなたは1人ではない/私は毎晩、あなたのそばにいる」という歌詞は、3人だけでなくアパートの住人全ての孤独に寄り添う。

 生まれも育ちも富山の私は、いつでも頼れる人がすぐそばにいる。都会を旅した時に感じる孤独。それは無いものねだりなのかもしれない。

作品はこちらから。

DJ CHIGON 富山市在住。ロックDJパーティ「LOVEBUZZ」のDJ。インディーロックを中心にプレイしている。