
わたしは最近、サンドイッチにハマっている。中でも好きなのはハムサンドである。
まず、10枚切の食パンに粒マスタードを混ぜたバターを塗る。そして、おなじみの3連のではないちょっといいハムを挟むのだ。たまに調子の良い日なんかはレタスも挟んで、見栄えと栄養バランスを良くしたりもしている。
わたしが作るのは、このハムサンドとツナサンド、たまごサンドくらいのものだ。この三つがわたしにとっての御三家で、これ以外の具はめったに挟まない。
さて、挟むものの中でも特に有名なものといえば、口と小耳だろう。同じ挟むでも「口を挟む」の場合、口はサンドイッチの具。一方「小耳に挟む」の小耳はサンドイッチのパンにあたる。この二つの材料でも、サンドイッチは作ることができる。耳が二つに口が一つなので、サンドイッチにはもってこいだ。
小耳と小耳の間に口が挟まっているのを想像してほしい。一体このサンドイッチは何サンドと名付けるべきだろう。今までの法則に従うと「口サンド」ということになるが、小耳を無かったことにするのはどうしても納得がいかない。ここはいっそ「小耳に挟んだ口サンド」とでも名付けようか。
日常にもサンドイッチは溢れている。「休憩を挟む」や「昼食を挟む」、「土日を挟む」なんていうのもある。
現在も過去と未来のサンドイッチだ。こんなくだらないことを考えている今日も、昨日と明日のサンドイッチなのだ。時間だってそうだ。1時は0時と2時のサンドイッチだし、20分は19分と21分の、35秒は34秒と36秒のサンドイッチなのだ。パンだったものが具になり、またパンになる。 ♪現在・過去・未来〜と渡辺真知子も大ヒット曲「迷い道」で歌っていた。曲名から拝借して「迷い道サンド」と名付けることにしよう。
我々はこうして毎日、膨大な量のサンドイッチを作り出している。そんな我々のサイクルも、もっと大きなサンドイッチの具でありパンであるのかもしれない。これはいったい何サンドなのだろう。まったく謎サンドだ。
これまでハムサンド、ツナサンド、たまごサンドがわたしにとっての御三家だった。今回新たに、小耳に挟んだ口サンド、迷い道サンド、謎サンドで新御三家が結成されることとなった。
三サンドの名付け親であり、新御三家の生みの親でもあるわたしは今、天井と床に挟まれている。そして、空と大地にも挟まれているわけである。これも立派なサンドイッチだ。
さて、そろそろ布団と布団に挟まれて、新たなサンドイッチになることとしよう。
1999年3月生まれ。黒部市在住。歌人。2022年に第1歌集「すべてのものは優しさをもつ」(ナナロク社)を刊行。