動画クリエイターの花上惇さん=富山市出身=は、ポジティブなショート動画で人気を集める。SNSの総フォロワー数が約50万人。米ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』のテーマ曲に載せて、冷蔵庫を勢いよく開けて、マシンガンのように連射する言葉の数々はクセになる。動画のエッセンスはことし『現在住所は冷蔵庫。自己肯定感急上昇。』(双葉社)の一冊にまとまった。現在に至る曲折を明かしてくれた。(聞き手・田尻秀幸、撮影・鳥飼祥恵)
 

——歌以外の動画に軸足を置くようになったのはなぜ。

 YouTubeの次にTikTokを始めました。最初は全然バズらない。歌がうまい人なんて、ネットにはたくさんいるでしょう? だから歌唱力以外の要素が必要だと気づいたんです。そこにコロナ禍が訪れた。仕事もせずにずっと家にいたので、当時の気持ちを自虐的に歌った替え歌を作ったんですよ。それが爆発的にバズった。AIの「Story」っていう名曲があるでしょう。あのサビを「やる気がないから 扶養のままで生きてたい 誰かの金でタワマン買って暮らしたい」とか歌っていました。あくまで本心ではなくネタですよ(笑)。

——ひどいですね(笑)。

 シリーズ化して、何百万回も再生されたものもあるんですけど、段々飽きられた。次に考えたのが、メイクが得意だったので美容動画。これはそこそこ回りました。で、色々やっているうちに今の「冷蔵庫」シリーズに行き着いたんです。冷蔵庫の中にカメラを置いて、ポジティブなメッセージを早口でまくし立てるという動画です。

 

——テンポが良くて爽快ですよね。「彼氏に浮気された? よかったじゃない。この星には約39億人も男がいるのに、わざわざクズを選ぶなんてどうかしてる。さっさと切りなさい」などと歯切れがいい。これを見て元気になる人もいます。

 「こんな風に励ましてくれる友達がいたらいいな」という思いから始めました。私は根がネガティブだから逆転の発想です。

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