「テテと繋がってるなら、世界と繋がってるということだよ」。『君は君の人生の主役になれ』(鳥羽和久、ちくまプリマー新書)に登場した一文だ。テテはBTSのメンバーであるVの愛称。端正な顔立ちとハスキーな歌声で熱烈に愛されている。冒頭の言葉は著者が経営する学習塾で、孤立感を覚えるというBTSファンの生徒に語り掛けたものだ。BTSのファンは世界中にいる。一見孤立しているように見えても、「テテ最高!」という気持ちで分かり合える人たちが地球の裏側にもいるのだ。なんと包容力のある言葉。

「テテ」を他の何かに置き換えてもいい。たとえばポケモン。1996年にゲームソフトが発売されて以来、アニメにも、カードゲームにも展開してきた。もちろん海外にもファンがいる。ピカチュウと繋がっているなら、どれほど孤独を感じても世界中のファンと繋がっているのだ。
ポケモンはとうとう工芸というジャンルにも進出した。「ポケモン×工芸展 美とわざの大発見」では、ポケモンが液晶画面から飛び出し、工芸との幸福な出会いを果たした。
とりわけ目を引くのが、金工家の吉田泰一郎による彫像だろう。イーブイと、その進化形3体を表現している。シャワーズは、つぶらな瞳で正面を見据えながら、体を横たえる。仏像のような静けさを帯びつつ、人魚のような艶めかしさもある。
うろこをきらめかせる皮膚の表情も美しい。青銅の色は、奥行きのある光をたたえた海のようだ。今回の一連の作品は全て銅製。ただ化学変化を駆使して、それぞれのキャラクターに合った色みを表現する。キャラクターの進化と、金属の変化が響き合っているのだ。工芸に興味を持ったことがなくても、ポケモンを知らなくても、魅力を感じるはず。鑑賞者は工芸とポケモンの奥深い世界の中で繋がっている。 (田尻秀幸)
会期:開催中〜6月11日
会場:国立工芸館(金沢市出羽町3-2)
開館時間:9:30〜17:30 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日
料金:一般 900円 / 大学生 500円 / 高校生 300円
問い合わせ:電話050-5541-8600