「呼吸」や「息」は命を象徴する。「呼吸が止まる」は死ぬことの言い換えだし、誰かと息が合う瞬間の快感は、人生の瞬間を明るく染める。大ヒット漫画「鬼滅の刃」では、呼吸は鬼と互角に戦うために欠かせない技術だった。

小林千紗 「しろの くろの かたち 2021-2」 (2021年、作家蔵)

 有機的で優雅な曲線と曲面で構成し、絶妙なバランスで自立する本作も、呼吸や息でできている。

 吹き竿に溶かしたガラスを巻き付けて、口から息を吹き込んで成形する「吹きガラス」を用いた。息で薄く長く膨らませたパーツを組み合わせる本作は、作者である小林千紗の呼吸や体の動きの軌跡がそのまま交錯している。

 着色した和紙によってガラスならではの光沢や透明性を奪ったからこそ、造形の美しさやしなやかさが際立つ。重力の約束を全く意識させない。細い管でつながる丸みを帯びた立体は、抽象化された肺がつながり合っているかのようだ。コロナ禍で禁じられた息と息が交じわるコミュニケーションを視覚化したようにも見える。

 本展には、小林以外にも6人の作家が出品している。竹岡健輔はガラスを編むという手法で竹工芸や編み物のような質感を表現する。津守秀憲はガラスに土という異素材を混ぜ合わせて焼成。大地を裂き、白い糸を引きながら何かが生まれ変わるような荒々しい造形を追求した。木下結衣は海の生き物や菌類をモチーフに、優雅さと気味の悪さがせめぎ合う作品で生命の崇高さを感じさせる。いずれもガラスという素材の意外な側面を引き出している。(幸)