消費者庁が全国のアレルギー専門の医師1089人の協力で3月にまとめた食物アレルギーの全国実態調査(0~92歳、6080例)によると、即時型アレルギーの原因となった食物の割合は、鶏卵が最多で33.4%、2番目が牛乳で18.6%。3番目は小麦を抜いて木の実類となり、13.5%を占めました。

※消費者庁「2021年度即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査」から抜粋、小数第2位を四捨五入

木の実類の内訳をみると、くるみが最多で半数以上を占めます。原因食物全体に占める割合で見ても、くるみは7.6%を占め、次いでカシューナッツ(2.9%)、マカダミアナッツ(0.7%)、アーモンド(0.6%)、ピスタチオ(0.4%)と続きます。

即時型アレルギーを起こした子どもの年齢群別に原因食物をみると、木の実類は「1・2歳」で3位、「3-6歳」で1位、「7-17歳」で2位などとなっており、子どものアレルギー症状の主要原因になっていることが分かります。

※消費者庁「2021年度即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査」から抜粋、小数第2位を四捨五入

食べる機会増える

調査報告書はアレルギー症例の増加の要因に、近年、家庭で木の実類が食べられる機会が増えたことを一つの可能性として指摘します。

財務省貿易統計によると、2021年のくるみの輸入量は、10年前の2.3倍に伸びています。健康志向の高まりで、スーパーやコンビニでもナッツ売り場には多くの商品がラインアップされています。

調査結果を踏まえ、消費者庁は卵や牛乳などと同じように、くるみを食物アレルギー表示の義務対象品目に追加する方向で、手続きに着手しています。

食べる機会が増えている「くるみ」

 

症状は?対処法は?

食物アレルギーは、食べたときに体が食物に含まれるタンパク質を異物としてとらえ、自分の体を守るために過敏な反応を起こすことを指します。軽い症状ではかゆみ、じんましん、唇やまぶたの腫れ、嘔吐、喘鳴(ぜーぜー、ひゅーひゅー)が現れます。重い場合には意識障害や血圧低下を伴うアナフィラキシーショックを起こすことがあります。

木の実類アレルギーについて、対処法や親が注意すべきことなどを小児アレルギーが専門の富山大医学部小児科学教授・足立雄一先生に聞きました。(※肩書は2022年の取材当時のものです)

 

小児アレルギーが専門の足立雄一医師

Q 子どもでは、卵や牛乳の食物アレルギーのことをよく耳にします。木の実類ではどのような症状が出るのでしょうか。突然発症するのでしょうか。

A(足立先生、以下同じ) 木の実類だからといって特別な症状があるわけでなく、他の原因食物の場合と同じです。卵や牛乳などと同じように即時型で、食べるとじんましんが出たり、咳が出たり、もっとひどくなるとぐったりすることがあります。木の実類に関していえば、ずっと普通に食べていたのに急に発症したというケースは少なく、子どもが少し大きくなって、初めて食べたときに発症することが多いと思います。給食で初めて、ということもあります。


Q 家庭でそういった症状が見られた場合、どう対処したらよいですか?急いで受診すべき症状や救急車を呼んだ方がよい目安を教えてください。

A 口の周りにちょっとじんましんが出た、少し顔が赤くなったという症状で、本人に元気があれば、自宅で様子を見て、小児科が開いている時間に受診してください。アレルギーの症状は短時間で消失することも多くあります。症状が分かる写真をスマホで撮影し、受診時に医師に見せるとよいでしょう。咳が出たり、じんましんが首の下にも広がったり、おなかを痛がるようなら早めに受診を。アナフィラキシーといってぐったりしたり、咳が止まらず息が苦しかったり、嘔吐し続ける、といった場合は救急車を呼んでください。


Q 子どもの食生活で注意すべき点、知っておくべきことを教えてください。

A 多くの保護者は卵や牛乳、小麦が食物アレルギーの原因として多いことを知っていらっしゃると思います。それに加え、木の実類も原因になり得ることを知っていただくことがまずは大事だと思います。現在、消費者庁で食品表示の義務化について準備がなされているのは、くるみですが、木の実類にはアーモンドやカシューナッツなどいくつも種類があります。カシューナッツで症状が出た人はピスタチオでも出ます。また、くるみとペカン(ピーカンナッツ)も同様です。そういった類似性があることもぜひ知っておいてください。一方で、一つの種類が食べられなかったら、すべてがだめというわけでもないので、医師に相談するのがよいでしょう。子どもは大人が食べているものを食べたがったり、親の方もちょっと食べさせたり、ということは家庭内でよくありますね。木の実類はすりつぶしてお菓子に含まれていることも多いので、食品表示をよく確認してください。アレルギーとは別の心配として、小さな子では喉に詰まらせる危険性もあります。