体が暑さに慣れて次第に強くなっていく「暑熱順化」。前回はその仕組みについてお話ししました。

今回は、暑熱順化を引き起こすために有効な対策をご紹介します。

重要なのは、気温が上がって熱中症の危険性が高まる前に、運動や入浴などを通し、無理のない範囲で汗をかくことです。

個人差もありますが、暑熱順化が起こるまでには1週間から2週間程度かかると言われています。余裕をもって活動を始め、本格的な暑さに備えましょう!

暑熱順化に有効な対策

<屋外運動編>
■速足ウォーキング・軽いジョギング

通勤・通学や外出時にできるだけ歩いたり、階段を使用したりするなど、意識して少し汗をかくような動きをしましょう。
体力には個人差があるので、“ややきつい”と感じるペースで。ウォーキングなら30分を目安にしてください。

【運動の目安】
ウォーキングの場合…1回30分
ジョギングの場合…1回15分
週5日程度



■サイクリング
同じく通勤・通学や外出時に、車ではなく自転車を使用しましょう。

【運動の目安】
1回30分、週3回程度



<室内運動編>
■適度な運動・筋トレ・ストレッチ

室内でも筋トレやストレッチで軽く汗をかくことができます。
運動時には室内環境にも注意を。温度は25℃程度、湿度も高くなりすぎないようにしましょう。

【運動の目安】
1回30分、週5回~毎日


運動時間や頻度はあくまで目安です。運動初日よりも疲労の感じが減ってきたら順化が進んだサインです。

これらの運動をしても必ず暑熱順化できるわけではありません。また、運動をする際は、個人の体質や体調、その日の天気や気温、室内環境に合わせて無理のない範囲で行ってください。水分や塩分を適宜補給し、熱中症に十分注意しましょう。

入浴でもOK

運動ができない場合は、毎日の入浴でも暑熱順化することができます。シャワーのみで済ませず、湯船に40℃程度のお湯をはって入浴しましょう。汗をかきやすい体にすることがポイントなので、汗が出るまで浸かります。

お湯の温度が高めの場合には時間は短め、低めの場合には少し長めの入浴がおすすめです。

入浴の前後には、十分な水分と適度な塩分を補給することも忘れずに。入浴を禁止されている方や控えている方はやめておきましょう。

【入浴の目安】
2日に1回程度
10分から15分程度 ※体に負担がかかるようなら短縮を


運動、入浴とも、体調がすぐれない場合は控えてください。繰り返しになりますが、気温、湿度などには十分注意し、必ず、実施の前後や最中に適度な水分、ミネラルを補給しましょう。「何かおかしい」と感じた時には中止を。まだ暑熱順化できていない段階では、特に熱中症への注意が必要です。

また、せっかく順化しても、運動をやめたり、体を暑さにさらさない日が続くと効果は薄れてきます。続けることが何より大切です。

 

◆舘川 美貴子(たちかわ みきこ)◆

管理栄養士、公認スポーツ栄養士
富山市生まれ。中京女子大学(現 至学館大学)健康科学部栄養科学科卒業。
日本スポーツ栄養学会評議員。学生アスリートやプロスポーツ選手の栄養サポートを行っている。