ーことし1月から2カ月、アメリカに行かれました。目的は?

 子どものころから「吉本の芸人になりたい」というのが夢でしたが、「アメリカで仕事したい」というのも言い続けてきました。それで昨年3月、アメリカのオーディション番組に出させてもらって、夏にも1週間行って小さなステージに立たせてもらいました。そしたら英語はしゃべれないし分からないし、現地の人たちのネタもよく分からない。「そもそも、なんぼ英語がしゃべれたとしても、現地のことが分からんと、なにもならへん」と思ったんです。それで会社にお願いして、1月から行くことになりました。

 現地では、地元の人みたいに朝からジム行って、カフェ行ってサラダ食べて、店員さんとしゃべって。演劇のワークショップに行ったりもしました。

ー日本を離れることに不安はなかった?

 芸人として仕事なくなっちゃうかなとかは、考えませんでした。次の目標に向かって、今やるしかない、と思ってました。もともと計画性はないんですけど、やりたいと思ったら、とりあえずやろうとすることが多いですね。

ー最近はオンラインライブで、ファンとの会話を楽しんでおられます。先日は「デジタルタトゥー」のことを熱く語っておられました。

 私にとってネットは、自分を知ってもらうプロモーションの場所。ハッシュタグを付ければ、世界中の人に自分を見つけてもらえる可能性があります。就活じゃないですけど、全部チャンスと思ってます。ネットにはそういう良さがありますが、一度載せたものは、一生残ります。これがデジタルタトゥーです。


 最近、スマホのこの画面だけで起きていることと思いすぎて、この先に人がいる感覚がないんじゃないかなと思う出来事が多いような気がします。嫌な言葉も、おかしな写真も、自分で消しても、ネットのどこかには残っています。いずれ検索されて就活に影響するかもしれないし、結婚して子どもができた時「お母さんこんなんなん?」て言われるかもしれない。

 将来のことまで考えて、使わないといけない。いろいろ考えると怖くなるかもしれません。だからと言って、使わないわけにもいかない時代。ネットのことを、みんなでもっと勉強していかなきゃいけないなと思っています。

 


ーとっても真面目でまっすぐなゆりやんさん。どのような家庭で育ったのか気になります。

 地元は田舎。一緒に住んでいたおじいちゃんが、すごく厳しい人だったんですけど、だじゃれが大好きで。風呂入る前に屁をして、「へこうきのってニューヨークいってこよ」とか。当時は「もうええわ!」と思ってましたが、今から思うと朗らかな家だったなと思います。

 それにおじいちゃん、言葉の終わりに、ことわざを1個付けてくるんです。障子を閉め忘れていたら「開けたら閉める。三つ子の魂百まで」とか。賞状もらって「やったー」と帰ってきたら、親は「よかったなー」なのに、おじいちゃんは「勝って兜の緒を締めよ」とか。内心「うるさいな」と思っていたけど、自然と頭に残っていて、今になって「なるほどなー」と思うことがあります。ちなみに「芸は身を助ける」もよく言ってました。

 ちなみにおじいちゃんは、アユ釣りが趣味で、最初は運送業だったんですけど、趣味が高じて釣具屋を始めました。父親もサラリーマンだったんですけど、私が中3のとき「やりたいことがある」と言って自営業に。結局、みんな好きなことをやってます。

ー大学在学中に、吉本養成所に入られました。両親の反応は? 

 大学3年の時、「就活せーへんの?」と聞かれました。全くするつもりなかったから「せーへん。吉本入る」と言ったら、「かまへんけど、何年までって決めとき。決めてあかんかった時のこと、考えとき」て言われました。あかんかった時、期限をもうけてなかったら、だらだらしてしまうし、次を考えてなかったら、挫折してしまうからと。でも挫折する気は全くなかったんで、考えませんでした。子どもの時から「芸人なりたい」と言ってたので、親からしたら「ほんまになってしもた」って感じらしいです。

 


ーインタビュー前編では、ゆりやん流の夢のかなえ方を教わりましたが、そんな子どもたちを親たちはどのようににサポートしたらいいでしょうか?

 子どもの立場でしか言えませんが、一緒に楽しいことをして「楽しい」と笑ってくれるだけで、うれしいかな。こうなってほしいとか言われたら、反発したくなることもあるかな。
 
 子どもさんと妄想で話を広げる遊びをしたら楽しいかも。世界で活躍するメークアップアーティストの人が、学生時代によくふざけてやっていたそうです。例えば友達にお茶を誘われたら「ごめん、私、明日からパリやねん。来週ロンドン行くから、その時にしよ」とか。そしたら今、本当にそうなってるんです。言霊(ことだま)です。うそでも「明日東大の1時間目の講義、起きれる?」とか言ってたら、ほんまにかなうかも。あほみたいですけど、やってみてほしいですね。


プロフィル
1990年、奈良県生まれ。2013年、関西大学文学部卒。在学中に吉本養成所NSCに35期生として入学し、13年に首席で卒業。17年に第47回NHK上方漫才コンテスト優勝、NTV女芸人NO1決定戦THE W 優勝など。