私たちの富山ライフにおいて、“クルマ移動”は不可欠です。その大切な手段を支え、目的地までより便利に、より快適に繋いでくれる道路・トンネル・橋などの公共構造物、いわゆるインフラが出来上がっていく細かな工程は、知っているようで知らなかったりします。
そこで8月上旬、富山県の企画として夏休み中の高校生を対象に行われた「建設のプロに会いに行こう!高校生のための現場見学ツアー」にライターも帯同。新鮮なリアクションを取る3名の高校生とともに、「橋」ができるまでを間近で学んできました!
設計した橋は、“唯一無二”の宝物!(大日本コンサルタント株式会社)
まずは橋の「設計」を担う『大日本コンサルタント株式会社』北陸支社へ。県内外の橋梁・道路・河川など社会インフラ整備の調査・計画・設計を担うプロフェッショナル集団です。2019年5月に富山市中心部のオフィスビルへと移転し、都心部とのアクセスも良好になりました。見るからに快適な働く環境も目を引きます。
案内役を担ってくれた山科さんは入社3年目の設計担当者。橋を作りたいという強い思いをもって大学で学び、橋梁設計分野で全国トップクラスの『大日本コンサルタント株式会社』に入社。「同じものが全くない」橋の魅力を熱く語ってくれました。地形に応じた構造、景観に応じた色合いやデザイン、周辺地域の意見も取り入れながら地域との“一体感”を作り上げるのが使命で、設計秘話を語る姿は実に誇らしげ。高校生たちは最先端技術である3D CADにふれ、感動しきりの様子でした。
最新の生コン製造現場は超効率的!(呉西生コン株式会社)
続いては、橋だけでなく建物やダム、護岸など様々な用途で使用される「生コンクリート」を製造する『呉西生コン株式会社』へ。セメントに砂利などを配合し、使用される目的に応じて緻密な計算で求められた強度が担保されるよう品質を管理することが重要な仕事です。敷地内には象徴的な大型プラントがあり、多くのスタッフが携わっているかと思いきや、実際はプロセスの多くがPCでの遠隔操作へと進化しており、少数精鋭で仕事をしています。
加えて驚かされたのは、大型プラントをはじめとした社屋が“チリひとつない”清潔な状態を保っていること。さらに、配合から90分以内に現場へと運び込むスピードが命のため、熟練の手作業が必要となる生コンの強度チェックまで、効率よくリズミカルに仕事が進められていることです。
案内役の岩田取締役業務部長は、「思ったとおりに品質管理ができるとうれしいですし、その積み重ねで大きな構造物が完成したときは、そこに携われたという喜びを実感します」と仕事の魅力を語ります。「きつい仕事という印象が払しょくされた」と高校生たちも目を丸くしていました。
鉄筋の大工場は、環境にやさしく、器も大きかった!(大谷製鉄株式会社)
お次は構造物の強度を高める「鉄筋」の製造を担う『大谷製鉄株式会社』へ。
地域で発生した鉄スクラップを高品質の鉄筋コンクリート用棒鋼にリサイクルする、環境にやさしい資源循環型企業として、社会と時代が求める製品を開発、供給している総合鉄筋メーカーです。東京ドーム約2.5個分の大きな敷地で、“約250人の従業員が自由闊達にチャレンジできる”環境を整えています。
建設現場での作業の効率性に配慮し、鉄筋の鋼種・サイズを記した「VCONシリーズ」などの製品を揃え、棒鋼素材の製造で北陸の圧倒的なシェアを誇る『大谷製鉄株式会社』。離職率が低く、一人ひとりの成長を大切にする社風で、“働きやすさ”でも業界随一とのこと。社内を案内いただいた製造部圧延課の瀧脇さんはじめ、各部署で見学に同行してくれた多くのスタッフが口を揃えて「従業員同士が家族のような関係で、いい職場ですよ」と笑っていたのが、なによりの証拠です。
高校生たちは「圧延の作業は難しそうだけど楽しそう!」、「思い描いていた製鉄のイメージ以上に、加工に工夫が施されていて驚きました!」と素直にやりがいを感じた様子です。
細かい部分を一手に担う、コンクリート製品の製造現場へ!(株式会社ケンチ)
いよいよツアーも後半。U型溝、L型擁壁など、建設現場の随所に組み込まれるコンクリート製品を製造する『株式会社ケンチ』に伺いました。高品質で美しいコンクリート製品は、工事の進め方や仕上がりを左右する、まさに“縁の下の力持ち”と言えます。そのようなコンクリート製品が、快適で豊かな環境づくりを支えています。
インフラという大きなプロジェクトの中ではパーツですが、生コンの生成や型枠の製造など全工程を社内で担うことから、モノづくりとしての充実感と達成感は大きく、高校生たちもその“ぎゅっ”と詰まった仕事の魅力にくぎ付けでした。入社20年の小西製造部長による「街のなにげない風景の中で当社の製品を見つけるたびに、社会貢献を実感できますよ」との言葉にも大納得です。
歴史に残る構造物をつくる仕事であることを現場で再確認!(川田建設株式会社)
ツアーのラストは、高岡市二塚の橋梁現場へ。発注元の県職員らにも見守られつつ、この大プロジェクトを受注した『川田建設株式会社』の案内で、通常は立ち入ることのできない、建設途中の橋の上へ。目の前に広がる田園風景、そしてこれから繋がっていく道路の先に、夢も未来も広がっていくような感動を覚えます。
橋梁建設の分野で豊富な実績を持つ『川田建設株式会社』。これまで培ってきた技術力を生かし、地域の方々に便利さと安心安全、そして「笑顔」を届ける使命を担っています。現場を指揮する堀内所長は、「歴史に残る構造物をつくる、成果と誇りを感じられる仕事です。」と胸を張り、入社2年目の土木技術者・野岸さんは「目標が行動を変えます。」と自らの経験から語ります。「学生時代の経験に無駄なことは何一つないので全てやり切ってください。」とまっすぐな目でアドバイスを送る頼れる先輩の姿。高校生たちにもその熱意がしっかり伝わった様子でした。
朝からはじまった見学ツアーも終わってみれば夕暮れ間近。各所40分ほどのダイジェスト的な見学ではありましたが、参加した高校生たちは、「学校では習っていないことをたくさん知ることができた。ものづくりはまだまだ奥が深そう。」、「父が土木の仕事をしていたので土木系の高校を選びました。今日のツアーでやりがいを実感できたので、この仕事に就きたいと心から思えました。」「想像以上にスケールが大きく、コミュニケーションが大事な仕事だなと思いました。大学でしっかり専門的に学んでいきたい。」と興味を更に深め、具体的な将来を考えるきっかけとなった様子。「インフラツアー」は、それぞれの未来予想図に、確かな輪郭をもたらしてくれたようです。
<編集後記>
現場は人間味に溢れた人ばかり。シンプルに、出逢いって大事だなと思いました。今はフリーのライターでギリギリの生計を立てていますが、このツアーが学生当時にあったら、また違った現在もあったのかなと。学生にはうらやましさ…嫉妬しかありません(笑)