少子化による生徒数の減少を背景に、全国で進む高校再編。高校教員向けの進路指導・キャリア教育専門誌の編集長を長年務め、中等教育における探究学習やキャリア教育にも詳しいベネッセ教育総合研究所の山下真司主席研究員に、高校再編による子どもたちへの影響や、将来の高校選びを見据えて親ができるサポートについて聞きました。

ベネッセ教育総合研究所の山下真司主席研究員
進路選択は子ども主体に
―12年後の未来を見据え、富山県では高校の再編議論が続いています。今の子どもたちに、どのような影響がありますか。
これまでは自宅から通える範囲に高校があり、学力レベルや通学距離などを軸に、ある意味、そんなに不自由なく進路選択ができた時代でした。
ただ、現実に高校の数が絞られることで、「なぜその高校に行きたいのか」「卒業後、どうなりたいのか」といった、学びたいことや適性、将来像を、保護者も含めしっかりと考えた上で、意思を持って進路を選ぶことが求められるようになるのではないでしょうか。
―高校が淘汰されていく中、選ばれる学校になるために、高校側はどのように変わっていく必要がありますか。
「高校の特色化」は必須です。学力レベルを軸に序列的に選んでいた進路選択が、「これをやりたいから○○高校に行く」というように〝行ける学校〟から〝行きたい学校〟へ、子どもたち主体の選択に変わります。
これまでもスクール・ポリシーという形で各校の特色は言語化されていましたが、少し抽象度が高く、他校との違いもあまり明確とは言えませんでした。各都道府県の教育委員会と学校側には今後、中学生にも伝わるような表現で具体的な学びのイメージを示すことが求められると思います。
それぞれの学校で、いったいどんなことが学べるのか、どういった高校生活が送れるのかをカリキュラムとしてしっかりと示すことがより大切になるでしょう。自校の特色化を十分に発揮できない場合、生徒自身が高校での充実した学びのイメージが持てません。結果、その学校を主体的に選択する生徒は少なくなるかもしれません。
高校再編は、それぞれの高校が、これからの時代を生きる子どもたちのための学校にアップデートしていく、そんなメッセージを発信できる機会だと私は捉えています。
公立志向に変化も
―富山県は元々公立志向が強い傾向がありますが、公私比率の撤廃や今後実現方向にある授業料実質無償化などを背景に、近年私立高校にも注目が集まっています。今後、公私のバランスはどのように変わるのでしょうか。また、私立はどのような戦略を描けばいいのでしょうか。
私は予測する立場ではないので適当なことは言えませんが…特色化という面で言えば、もともと建学の精神をもとに長年学校経営に取り組んできた私立高校は、一歩先を進んでいるかもしれません。加えて財政的に余裕があれば、校舎やトイレがきれいで、制服もかわいいなど、中学生からは輝いて映ります。今まで検討のテーブルに乗らなかった私立という選択が、高校無償化によって、選択肢に入ってくるご家庭もあるでしょう。
昨年度に大阪で起こった※「寝屋川ショック」という現象も象徴的ですが、全国的な傾向で言えば高校志願者が「私立に流れている」という傾向は確かにあると感じます。今後、それぞれの私立高校は、さらなる特色化に向けた二の矢三の矢を打ち出していくのではないでしょうか。
※寝屋川ショック…国の授業料支援の上限を大阪府が独自に引き上げる支援策を行ったところ、私立人気に拍車がかかり、進学校とされる府立寝屋川高校の入試で定員割れが起き、教育関係者に衝撃が広がった出来事。
他方で、公立高校も特色化・魅力化に向けて動き始めています。国は「高校教育改革に関する基本方針(グランドデザイン)」を公表し(2026年2月13日)、「2040年の未来を担うみなさんへ」というメッセージとともに、これからの公立高校の方針を示しています。
いずれにせよ、選択肢のバリエーションが増えるということだと思います。だからこそ、選択の軸を持つことが問われていきます。
「好き」を伸ばす環境づくり
―子どもたち自身が、将来行きたい高校を自分で選べるようにするために、今からした方がいいことはありますか。
まずは新しい経験をどんどん増やしてください。学校に行っている間だからこそ、失敗しても許される部分があります。いろいろなことにチャレンジし、一歩を踏み出して得た経験は、その後の大きな自信につながります。
また、日常生活の中で何にでも疑問を持つことをちょっと意識できたらいいですね。道路のマンホールはなぜ丸いのだろうか、電線にとまっている鳥が感電しないのはなぜなんだろう、など自分の興味を知り、本当の自分を見つけていく、いわば「冒険の旅」を楽しんでほしいと思います。
―親はそれをどのようにサポートしていけばいいのでしょうか。
子どもたちのやりたいこと、好きなことをとにかく伸ばしてあげるように支えてあげてほしいのです。これからの学びのキーワードは「探究学習」。デジタルトランスフォーメーション(DX)化や生成AIの進化が加速する「これからの社会」では、知識をただ習得するだけでなく、いかに活用できるかが大切になります。
「なぜこうなっているのか」「そもそもこれはどういうことなのか」と、自ら問いを持つ力が非常に重要になります。それを中学生や高校生でいきなり高めようとしても急にはうまくできません。幼児期のうちから、「なんでそう思ったの」と子どもたちに疑問を持たせ、思考を促すような関わりができればよいですね。
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