膵臓(すいぞう)がん手術などを担う消化器外科医の不足が深刻化する中、富山大付属病院(山本善裕病院長)の消化器・腫瘍・総合外科と膵臓・胆道センターは8日、がん治療や若手育成の資金を募るクラウドファンディング(CF)を始めた。病院は厳しい経営状況が続いており、新たな活動費用を確保する狙い。第1目標額は1千万円で、期間は12月5日まで。
厚生労働省のがん診療に関する検討会の報告書によると、2040年に日本消化器外科学会に所属する65歳未満の医師は25年から39%減少し、9200人になると予測される。一方、高齢人口の拡大でがん患者は増え、約5200人の医師不足が見込まれるという。
消化器外科医不足の背景には身体的、精神的負担の大きさがある。富山大付属病院によると、膵臓がん手術などは高難度で長時間にわたるため、全国的に志望者が減少しているという。医師のワークライフバランスを実現しようと、同病院では夜間や休日の当番制、長時間手術の交代制などを導入してきた。
病院の経営環境は悪化し研究費をはじめ医師の自己負担が増える中、CFは第1目標で膵臓がんの臨床研究や手術トレーニング、採用ホームページ作成などの費用を募る。第2目標額は2千万円で、学会参加や論文発表に充てる。5年間で若手外科医30人の確保を目指す。
8日、富山市杉谷の同病院で山本病院長らが記者会見した。消化器・腫瘍・総合外科教授の藤井努膵臓・胆道センター長は「数カ月待たないと、がん手術ができない時代が来る」と危機感を示し、「教育体制を整備し、働きやすく安心して修練できる環境にしていきたい」と話した。
申し込みはCFサイト「READYFOR(レディーフォー)」で受け付ける。