社会学者の古市憲寿さんは新著『昭和100年』で、戦後から現代までの日本を貫く
「昭和型社会」の延命と、その影響について問い掛ける。
昭和は終わるのか。何度でもよみがえるのか。古市さんに新著に込めた思いを尋ねた。(聞き手:田尻秀幸、撮影:鳥飼祥恵)
——さまざまなデータを基に2040年代の日本を未来予測した章もあります。これが本当に厳しい内容ですね。
暗い未来しか描けないんです。特に日本は2040年代が一番大変だと思う。高齢化率のピークが2040年代なのですが、その時代をどう切り抜けるのか。

ただ希望とまではいかないけれど、面白い現象は起きそうです。労働力が減るけど、AIが代替してくれる。それに若者が少ないから犯罪率が下がる。革命も起こらない代わりに暴動も起きない。平和な時代にはなりますね。
——未来というと古市さんは藤子・F・不二雄さんがお好きですよね。いろんな作品があるけれど、藤子・Fさんが想像した未来にはもう少し希望があった気がします。
ドラえもんが生まれた世界って「古い」未来なんです。藤子・Fさんは1996年に亡くなりました。Windows 95は知っていたかもしれませんが、SNSもiPhoneも見えなかった。彼はずっと未来を描いてきた人でしたが、インターネット的な想像力はなかったと思う。タケコプターのような彼の想像力って工業化社会の延長であって、情報化社会ではなかった。
——時代によって社会の見方も未来予想図も結構変わりますね。本の中で紹介されているように作家の阿川弘之さんは「飛行機や自動車の時代に新幹線なんていらない」と言っていました。
今では一周回って、飛行機や自動車のほうが環境に悪影響を与えると思われていますよね。日本の新幹線はIT周りは最悪ですが、乗り物としては優れている。ほぼ時間通りで動くし、直前でも予約が取れるほどキャパシティーに余裕がある。

北陸新幹線も延伸して日本各地をそれなりに結んでいる。おかげで僕は福井まで椎名林檎さんのライブを観に行くことができました(笑)。

富山も行きましたが、路面電車も成功していますよね。ヨーロッパでも路面電車は復活しているんです。「日本は電線が醜い」という人がいますが、イタリアは路面電車用に架線が張り巡らされてきました。
——イタリアが富山に追いついた(笑)。新年はどんな予定ですか。
日本国憲法の話を書きたいですね。今回も触れましたが万博の本も出したい。最初のロンドン万博から170年ほど経ちました。その間に人々が構想した未来は今どうなっているのか、振り返ってみたい。あと、若い人をフックアップしたい気持ちもあります。その方が良い人そうに見えるでしょう(笑)。
1985年東京都生まれ。社会学者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。日本大学藝術文化学部客員教授。日本学術振興会「育志賞」受賞。若者の生態を的確に描出し、クールに擁護した著書『絶望の国の幸福な若者たち』などで注目される。2018年には初の小説単行本『平成くん、さようなら』を刊行。他に『絶対に挫折しない日本史』『ヒノマル』『謎とき 世界の宗教・神話』などの著書がある。