バレーボール「SVリーグ」のKUROBEアクアフェアリーズ富山は、2024-25シーズンの新監督に川北元(48)を迎えた。川北は大学まで選手としてバレーに取り組んだ後、大学院で「コーチング科学」を専攻したことによって指導者としての目覚めを得ている。当時のスポーツ界はまだ、一部の指導者による暴力的言動に歯止めがかかっていない時代だ。そんな体制を変えたいと願った川北は「もっとしっかりコーチングできる人になりたい」と、大学院修了後に渡米。人脈も、英語力もない。あったのはバレーへの情熱だけだった。

レジェンドに直談判
東京都出身の川北は、中学入学と同時にバレーを始めた。都立高に通い、チームとしての好成績を挙げることはできなかったが、アタッカーとして個人スキルを向上させている。国体の都選抜チーム入りを目指してセレクションに参加し、最終選考まで残った。川北の記憶では、公立校の生徒で唯一だったという。この経験が自信となり、関東大学リーグの強豪、順天堂大に一般入試を経て進学した。エリートぞろいのチームではアタッカーとして出場するのは難しく、リベロ制度が採用される前だった当時、レシーバーとして出場機会を得ている。
順天堂大の大学院生となり、コーチとして後輩たちを指導するようになった。科学的にコーチングを学ぶようになり、ステップアップを図ろうと、米国に90日の観光ビザで入国。バレーの強豪大を、紹介状もなく渡り歩くなかで「どうせなら五輪トレーニングセンターに行ってみたら?」という助言を得て、コロラド州の同施設を訪問した。