関脇大の里(二所ノ関部屋)の優勝、大関昇進に沸いた大相撲秋場所。とはいえ、故障した富山市出身の朝乃山(高砂部屋)に加え横綱照ノ富士(伊勢ケ浜部屋)も休場したことで物足りなさを感じたファンも少なくないのではないか。横綱の土俵入りは大相撲の華。四股を踏めば国技館の観客が「よいしょ!」と声を掛け、重厚なせり上がりには満場の拍手が沸き起こる。現代に伝わる横綱土俵入りは雲竜型と不知火型の二つ。それぞれの所作を完成させたのは2代目梅ケ谷、太刀山で、いずれも富山市出身の横綱であることは県内好角家の間ではもはや常識と言っていいだろう。ただ、当時の新聞をひもとくと、奇妙な記述を見つけた。不知火型の元祖とも言うべき太刀山が、自身の土俵入りを「雲竜の型」と明言しているのだ。

残り2106文字(全文:2437文字)