——ラジオ界で一目置かれる存在だった。フリーのプロデューサーに転身したのはなぜ?
理由はいくつかあります。まず放送局にいると40代半ばにもなれば、二者択一を迫られるんですよ。管理職になって偉くなるか、それとも辞めて現場で作り続けるか。迷ったけど、やっぱり番組は作りたかった。仕事の保証はなくなるけど、人生一度きり。会社があるからできることもあるけど、それが足かせになることがある。どっちがいいとかじゃなくて、どっちを選ぶかってことですね。

それからもう一つのきっかけは、ゲームです。「龍が如く」というゲーム内のラジオ番組を作る仕事を引き受けたんですよ。これが非常に面白かった。今までの経験を生かして、放送以外にもラジオの可能性を広げられると思ったんです。今は個人でも発信できるし、エンタメも多様化している。ちょっと前まではできなかったことができる時代になったんです。会社員やってる場合じゃないって思っちゃった。まあ、ダメだったらまた就活すりゃいいですしね(笑)。
——ポッドキャストで早速番組を作っていますね。母校の一橋大学の人脈を生かした『一橋大学は出たけれど』というトーク番組です。
一橋大学は来年150周年を迎えます。で、大学が課題に思っているのが、同窓会「如水会」に入らない卒業生が増えているということです。疎遠になっている卒業生とつながりたい大学からの依頼を受けて番組を作っています。
いかにも一橋っぽい偉いOB・OGじゃなくて、芸人とかスナックのママとかが出演しています。僕みたいな落ちこぼれでも気後れしないで聴けるような番組です。
——聴きましたよ。橋本さんのMCがいいですね。低くて渋い声が心地良い。
ありがとうございます。実は映画監督の山田洋次さんにも褒められたんですよ。「君、いい声だねえ」ってしみじみ言われました。

——ライブストリーミングの「Twitch」にも力を入れていますね。
ネットにおけるラジオ生放送とも言えますね。配信者がトークして、リスナーからメッセージもらって、コメントしたり。昔は限られた人しかできなかったことだけど、今は誰でもできる。マネタイズもできます。配信者には億万長者もいます。

生配信は言うなれば個人の生放送。ラジオ局の番組は大半が生放送ですから、自分のノウハウを生かせることが多い。それに配信を見るのが前から好きだったので、自分でやることに戸惑いは全くないし、すごく楽しいです。
——古巣の番組は?
引き続きやっていくプロジェクトもあります。円満退社なので。でも、力を入れたいのはネットコンテンツのラジオっぽいものですね。映像でもトークがメインのものならやっていきます。
ラジオ局の経営が大変な時代になっています。でも、僕はラジオで育ったから、ラジオの可能性を信じています。放送局というよりもラジオ的なものが未来に残るにはどういう形があり得るのか。