名古屋の「モーニング」は、ドリンク代のみ、またはドリンク代に数百円追加するだけで朝食を食べられるサービス。長年愛されて文化として浸透し、セットメニューも各店で豊富にそろえています。ゼロニイ編集室が気になった3店を巡りました。取材は1泊2日、3食全てモーニング!(情報は取材時の内容です)

こだわりのサンドイッチ プラス150円でセット
コンパル大須本店

常連客らがくつろぐ店内。週末は開店すると一瞬で満席になるという

朝8時。常連客らが次々と入ってくる。新聞を読んだり、モーニングセットのサンドイッチを食べたりと、憩いのひとときをゆったりと楽しんでいる。昭和22(1947)年創業の、名古屋を代表する老舗喫茶店「コンパル」の大須本店は、地元の人に愛されている。

この日の一番乗りは、隣で「めん処 浅ひろ本店」を営む男性。地元の人にとって、モーニングはどんな存在なのか説明してくれた。「愛知のモーニングは一宮が発祥と言われます」と前置きしつつ「名古屋の人にとって、モーニングは当たり前の文化。私は週2、3日だけど、毎日来る人もいますよ」と言う。

「モーニングセット」(ドリンク代プラス150円) ハムエッグトーストが付く。写真のドリンクは名物のアイスコーヒー(480円)

「モーニングセット」を早速注文。ドリンク代に150円プラスすると、シンプルなハムエッグトーストが付く。サンドイッチにこだわるこの店は、挟むキャベツ用のドレッシングなどを自社工場で製造しているという。ドレッシングやハムエッグに合わさるソースは程よい酸味が感じられる。ボリュームも朝にちょうどいい。

「エビフライサンド」(1,100円) 大きなエビフライ3本と焼いた卵、キャベツ、タルタルソース、カツソースなどが挟まり、ボリューム満点

ドリンクは名物のアイスコーヒーをチョイス。デミタスカップに入った濃いホットコーヒーと、氷の入ったグラスが一緒に運ばれてくる。客自身が氷の入ったグラスにコーヒーを注いでアイスにするのがこの店のスタイルだ。自分で完成させるなんて、わくわくする。

レトロで落ち着いた空間でじっくり堪能しそうになったところ、ハッとした。次の店のモーニングタイムが終わってしまう。後ろ髪を引かれながら会計に向かう。支払いは630円。お値打ち価格!

エビフライサンドを運ぶ店員の山本悦子さん
 
コンパル大須本店
名古屋市中区大須3-20-19 
TEL.052-241-3883
8:00~19:00(LO18:30、モーニング11:00まで)
休:元日
86席

小倉あん・きなこバターのる 目を引くトースト
BUCYOCOFFEE(ブチョーコーヒー)

平日のモーニング帯終盤にもかかわらずにぎわう店内。土・日曜は行列必至

名古屋といえば、小倉トースト。人気店と評判の「BUCYOCOFFEE」を訪ねた。平日にもかかわらず、店内は常連客や観光客で満席、外には記名して待つ人も! 午後に再来店すると、店長の堀しのさんが温かく迎えてくれた。「モーニング帯はありがたいことに待ってくださるお客さん、断念されるお客さんがいて。申し訳ないので、人気メニューは終日頼めるようにしているんです」と打ち明ける。

「コンプリートモーニング」(1,200円) ドリンクとトーストのほか、きな粉をかけた「ミニきなこソフト」が付く。パンはカイザートーストも選べる。写真のドリンクはブレンドコーヒー、パンは食パン。10:30以降は「午後のモーニングセット」(1,350円)として注文可

そのメニューとは「コンプリートモーニング」という、ドリンクとトースト、ソフトクリームのセット。トーストには、自家製小倉あんと、厳選したきな粉をふんだんに使った「きなこバター」が立体的にのる。目を引く一皿で、食べる前に写真に残しておきたくなってしまう。小倉あんは砂糖控えめ。きなこバターは直火焙煎(ばいせん)によるきな粉の豊かな香りと、大豆クランチのザクザクとした食感が楽しい。両方とも、深いりの自家焙煎コーヒーにぴったりだ。

「まるで磯辺焼きトースト」(750円) 味付けのりとドイツ産モッツァレラチーズなどを挟んだホットサンド。チーズがいつまでも伸びる
「午後は比較的空いています」と話す店長の堀しのさん
 
BUCYOCOFFEE(ブチョーコーヒー)
名古屋市中村区名駅南1-10-9 山善ビル1F
TEL.052-582-3780
7:15~17:00(LO16:30、モーニングはLO10:30)
休:1月1、2日
40席

昼でも夜でもモーニング 味噌カツや鉄板ナポリタン
パイナップルミント

驚いた。こちらは夜もモーニングメニューを提供する。「パイナップルミント」は、モーニングタイムが終わる午前11時以降は100円プラスにはなるが注文できる。

「味噌ささみカツ丼モーニング」(ドリンク代プラス350円。11:00以降はプラス450円で注文可) 鶏ささみ肉を使うのは、豚肉が食べられない外国人客に配慮する側面もある

メニューはバラエティーに富む。トーストとスクランブルエッグなどが付くモーニングらしいメニューのほか、中華雑炊やハヤシライス…。モーニングで食べられるの、と驚かされたのは「味噌ささみカツ丼」のセットだ。ドリンク代にプラス350円、午前11時以降はプラス450円で、丼のほか、みそ汁とサラダまで付く。豚肉の味噌カツは名古屋めしとして有名だが、この店で使う肉は鶏ささみ。「その方がヘルシーでしょ。朝だし」とオーナーの冨田貴光さんが笑う。生パン粉をまぶしたささみカツはさくさくで、特製の甘くて濃厚な味噌だれがよく絡む。どんどん箸が進む。

「特盛!!名古屋めしモーニング」(ドリンク付き1,500円。11:00以降はプラス100円) 名古屋めしを2種類味わえるセットで、満腹になること間違いなし。「鉄板ナポリタン」は東京の三つ星ホテルの料理長からも評価されたという。スープもセット

サービス精神に満ちあふれるこの店は、量が多いのも特徴。「特盛!!名古屋めしモーニング」は、大盛りの「鉄板ナポリタン」に、5cmほどに厚切りしたパンを使った「味噌ささみカツサンド」などが付き、度肝を抜かれる。

看板猫のミルクティーを抱くオーナーの冨田貴光さん

何となく3店回っただけで大正解。名古屋のモーニング、恐るべし。他にも名店があるはず。また来なければ。

 
パイナップルミント
名古屋市中村区名駅南3-6-6 
TEL.052-414-6093
月~土曜8:30~15:00、18:00~22:00、日曜8:30~18:00
不定休 
17席