食品サンプルを長年飾るお店には、初めて行く店でも懐かしさを感じませんか? 富山には、食品サンプルをフェルトや毛糸などで手作りするお店があるんです。氷見市の「お食事処よしだや」です。ぬくもりある作品はどれもレトロかわいい♡ その独自性が評判を呼び、なんと県外で展示されたこともあるんです。作り手の従業員、三浦和香子さん(67)に話を聞きました!

異彩を放つサンプルたち。店前を通る人からきょうも視線を集める

昭和25年創業の老舗のショーウインドーに、定食やうどんなどの食品サンプルが並ぶ。近づいて見ると、ご飯は白いフェルト。うどんの麺は毛糸! 唯一無二のメニュー紹介に一瞬たじろぐが、料理の特徴を捉えようと丁寧に作られたものだと伝わってくる。どんどんかわいく見えてくる。

プリン・ア・ラ・モード(700円)のサンプルを持つ三浦さん。自家製の硬めプリンやさまざまなフルーツなどを表現

三浦さんが作り始めたのは十二、三年前。ろう製サンプルが汚れ、買い換えの話が出たのがきっかけだった。「私、小学生の時から手芸が好きで。『やってみようか?』って提案したんです」。料理の実物や器を自宅に持ち帰り、定食なら煮物やエビフライといった具材の形と色味を一つ一つ再現した。

弁当スタイルの「よしだや定食」(1,300円、みそ汁付き)。実物の右奥にあるのが三浦さん作の食品サンプル。煮物やエビフライなどをフェルトで形作り、綿を入れて立体的にした

作った数は30点近くに上る。近作を尋ねると「最近は色あせた物をメンテナンスしていますよ」とのこと。お店の看板とも言える作品に、ずっと愛情を注ぎ続けている。

「オムライスプレート」 (実物は1,200円)
「フルーツサンド」(実物は820円)
「とろろ昆布おにぎり」 (実物は200円)

撮影:さいとう写真事務所