目指すはホームラン! 今盛り上がっている高校野球の球児たちはドカンと一発を狙いたいところだ。だが、舞台が甲子園ではなく婚活市場だと、事情はだいぶ違ってくるようで。

官製婚活が盛んな入善町

 朝日・入善支局で勤務していたころ、入善町は人口減少対策の第一歩として婚活支援に力を入れていた。食事やスポーツ、ゲームを楽しむ各種婚活パーティーに加え、一日に何人もの異性と代わる代わる対面する集団お見合い会など、ラインアップの豊富さには本当に驚かされた。取材を進めるうちに感化され、私も個人的に何度か参加させてもらった。会場にはスタッフとして多数の町職員が配置されており、はずい思いをした。

入善町職員が参加者役となり、集団お見合い会をシミュレーション(入善町役場)

 当時、町役場結婚・子育て応援課の担当者は「婚活パーティーではホームランを打とうとする人が多い」と嘆いていた。高い理想を掲げ、百点満点の相手を狙う余り、成功が遠のくという。例えば幅広い年齢層の男女が参加できるようにすると最も若い女性に男性のリクエストが集中し、マッチング率が下がる事態が生じるとか。自分の市場価値以上の「売値」を求めていることと同じ理屈だろうか。

入善町の婚活イベントのチラシと官製婚活について報じた記事

「適当な相手」とは?

 結婚を躊躇する理由の一つに「適当な相手と出会えない」ことを挙げる人が多い。もっともらしい理由ではあるが、人によって異なる「適当」って何だろうか。今回はこれまであまり語られてこなかった「適当な相手」について切り込んでみる。

 例えばAさんと会ったとしよう。「悪くない。でも後でもっとすてきな方が現れるかも」。こんな逡巡は誰しもあるだろう。そこで複数の異性と出会う中で最も理想とする相手と結ばれる戦略を数学的に考えてみたい。何かと嫌われ者の数学だが、夏math盛り(なつまっさかり)ということで幸せをつかむためにも少しお付き合いを。※mathは英語で数学の意味

夏は恋の季節でもある(富山市内)

最初の数人は丁重にお断り

 例えば20人の異性と出会うとする。その中にはタイプの人もいれば、絶対無理な人もいる。彼ら(彼女ら)がどんな順番でやってくるかは20色の玉の並べ方の総数と同値なので20×19・・・・×2×1=243京2902兆81億7664万通りある。この天文学的な数字を分析するのは不可能だろう。そこで高校数学で習う数列や確率の手法を用いて考察してみる。

 数値を一般化し、n人の異性と順番に会うとし、次のような条件を定める

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