富山県内で火葬場(斎場)の使用料が自治体によって大きく異なることが、北日本新聞社のまとめで分かった。それぞれ住民と住民以外で金額を分けており、大人の住民向け料金を比べると、最大3万円の差がある。住民以外が利用する際には高めの使用料を設定している。背景には財政状況や葬送習慣など、地域の実情が複雑に影響しているようだ。

富山県内には16カ所の公営火葬場 

 

 県内には計16カ所の火葬場がある。自治体単独、もしくは複数の市町でつくる事務組合が運営しており、他県で見られるような民間施設はない。富山市は4カ所(うち1カ所は休止中)、南砺市3カ所、魚津、黒部、入善、朝日の2市2町の「新川広域圏事務組合」2カ所、それ以外の6市1町は1カ所ずつ設けている。

 それぞれ年齢に応じて三つの料金区分を設定。死産児のほか、おおむねの自治体が12歳以上と12歳未満で分けている。

住民向けは富山市の無料が最安値

 住民向けでは富山市が無料と最も安い。1967年に富山市西番の火葬場を建ててからの措置で、市は「市民サービスの向上」(環境保全課)を第一の理由に挙げる。一方、最も高いのは上市町の3万円(14歳以上)で、立山町の2万7500円(12歳以上)が続く。

富山市民は無料で市立の火葬場を使用できる。写真は富山市斎場=富山市西番

 住民以外が使用する場合は使用料が割高になり、住民向けと比べてそれぞれ5千円から5万5千円の開きがある。住民以外向けでは、射水、南砺両市(いずれも12歳以上)の7万5千円が最も高い。

舟橋村民は近隣自治体の施設を利用

 舟橋村は火葬場を持たないため、村民は近隣の施設を使う。村によると、富山市の施設を使うことがほとんどのため、12歳以上の村民の場合、富山市民以外向けに設定された5万5千円を支払っている。立山町も同じく施設はないが、1968年から富山市の火葬場を利用しており、現在は町民向けに設定された2万7500円が料金となっている。

立山町は富山市の斎場を町民料金で利用できる。写真はイメージ(画像提供:PIXTA)

使用料や年齢区分の根拠あいまい

 各自治体は条例を定めて料金や年齢区分を設定している。射水市は年間経費と、想定される火葬件数から1件当たりの経費約10万円を算出。公共施設の使用料などに関する市の方針に基づいて利用者の負担額を決めた。そのほかでは、施設の運営費や他市町の状況を参考にしたと答えた自治体もあったが、そもそも条例の内容の根拠がはっきりとしないケースが目立った。

 理由を尋ねると、「記録が残っていないので把握できない」「行政サービスの料金は横並びが多いが火葬場だけは別。なぜこの料金なのかは分からない」「地域の葬送習慣が影響しているのではないか」などの意見が聞かれた。(柳田伍絵)

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 火葬の費用に関する話題を2回にわたってリポートします。28日公開の次回は近年相次ぐ値上げがテーマ。7月1日から増額する自治体も…。

 火葬メモ 『続日本紀』には700年に僧侶の道昭が弟子によって火葬されたという記述があり、文献上は日本で初めての火葬とされる。天皇で初めて火葬されたのは持統天皇だった。ただし6世紀頃の古墳には「かまど塚」と呼ばれる埋葬設備が残されていた。さらに縄文、弥生時代の遺跡からも焼いた人骨が発見されており、日本では記録に残る以前から火葬が行われていたと考えられている。

 

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