北アルプスの名峰、薬師岳(富山市、標高2926メートル)の山頂にある祠(ほこら)「薬師堂」に6月16日、開山以来初めて薬師三尊像が安置された。歴史的な瞬間を直接見て記事にしたいー。その思いから、ほぼ登山初心者の記者も15日から1泊2日の登頂会に参加し、山頂を目指した。山の楽しさ、そして厳しさに触れた山行を時系列で紹介する。(川﨑那月)
■15日
午前10時45分ごろ 薬師岳の夏山開きに合わせた登頂会には県内外の87人が参加。折立登山口(1356メートル)から出発し、すぐに見えてきたのが、「三八豪雪」の1963年に遭難死した愛知大山岳部員13人の慰霊碑「十三重之塔(とみえのとう)」だ。今回の安置の中心となった太郎平小屋オーナー、五十嶋博文さん(84)を事前に取材した際、この事故で遺体を収容したときの悲しい思いを聞いていた。執り行われた仏事で、安全登山を願って手を合わせてから歩みを進めた。

十三重之塔に手を合わせる登山者
道中は樹林帯で、急な階段状になっている場所が多いため、息がすぐに上がる。
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