全国的におにぎり専門店が増えています。
なぜ今、おにぎりが盛り上がっているのでしょう?
その理由について、一般社団法人おにぎり協会(神奈川)代表理事の中村祐介さんに聞きました。

おにぎりを味わう中村さん=沖縄県内

 —おにぎりに今、何が起こっているのですか。

 おにぎりって、安くて当たり前、あって当たり前な存在で、まったく注目されていませんでした。ですけど、SNSの普及によって徐々に変わってきました。口コミによって、多くの人がおいしいおにぎり屋さんを見つけるようになりました。

 コロナ禍で、夜の会食需要が減りましたよね。「ランチはごちそうにしようか」と考える人が出てきて、コンビニやスーパーはごちそう系のおにぎりを出すようになりました。今までおにぎりは100円、150円という価格帯でしたが、200円という高いものが出てきたんです。そうすると人間は慣れていくもので「100円ぐらいじゃないと買えないな」と思っていた人が、「高いの、おいしいじゃん」って興味を持つようになっていきました。

 —コストの面では、おにぎり店は出店しやすいのですか。

 小麦は高騰していますが、米は最近そこまで値上がりせず、むしろ下がった時もありました。価格が安定していると、安いおにぎりもごちそう系も用意しやすい。お客さんの多様なニーズに対応できるようになってきた。おにぎり専門店は他の飲食店と比べると、設備投資にかかる費用が少ないです。極端に言うと炊飯器やそれを扱う電気、具材を置いて握るスペースがあれば済む。実際、そんな店もありますね。

 —全国でおにぎり専門店の出店が相次いでいますね。

 今までだったら、米の卸売業者や生産者が販売をする道の駅など米と関係ある事業者が始めるケースが多かったと思うんですけど、今はそれ以外の異業種が参入しています。〝おにぎり戦国時代〟みたいになっているんですよ。群雄割拠で楽しいんですけど、客と向き合い、おいしいものを提供するお店が残っていくんだろうな。

 —中村さんにとって、おにぎりの魅力とは。

 自由度が高く、ご当地性を出すこともできる。富山だったら、僕は立山サンダーバード(立山町)のおにぎりが好きですよ(笑)。「くま」と「いのしし」を買ったことがあります。

 そういえば、ローソンが富富富のおにぎりを出しましたね。富富富は冷めてもおいしい。非常におにぎりに向いていると思います!

 
PROFILE
中村 祐介さん
2014年に一般社団法人おにぎり協会を設立。「おにぎり」を日本が誇る「ファストフード」であり「スローフード」であり「ソウルフード」であると定義し、おにぎりを通じて和食文化の普及活動を国内外で行う。おにぎりの握り方講習会や、おにぎりの歴史や文化について学ぶイベントを開催。書籍「おにぎりの本」の監修も務めた。