謎のウイルス感染により崩壊したアメリカを舞台にした本作は、中年男性と少女の過酷な旅を描いたサバイバル・アクション。2013年に発売され大ヒットしたゲームが原作だ。

イラスト:kumiko yamaguchi

 パンデミックから20年後、厳重に管理された隔離地域で、運び屋のジョエルは家族を失ったトラウマを抱えながら生きていた。ある日、かつての仲間から身元不明の少女エリーを現在地から脱出させて欲しいと頼まれる。彼女が持つ抗体からワクチンを作るため、2人は目的地へと向かう。

 第1話、隔離地域から脱出しようと試みる場面で、ラジオからイギリスのバンド「デペッシュ・モード」の「Never Let Me Down Again」が流れる。「ベスト・フレンドと一緒にいる/彼にガッカリさせられないよう願っている/彼は私をどこに連れて行くか分かっていて/もちろん、そこは私が行きたい場所なんだ」という歌
詞が、その先の2人の関係を予兆している。

 序盤では「生きたまま『荷物』を運ぶ」任務に忠実なジョエルだが、旅が進むにつれその一方的で冷たい感情は薄れていく。敵に襲われた彼を助けようと慌てて銃を撃ったエリーに対し、「すまなかった」と謝る。彼女を「荷物」ではなくひとりの人間として接し、正しい銃の使い方を教える。2人が「バディ」として信頼し合う瞬間に見えた。

 現実でも、コロナ禍を経てさまざまな価値観や人間関係が変化した人は多いだろう。疑心暗鬼な日々に励ましてくれた友人と、離れていった友人の顔が交互に思い浮かんだ。

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DJ CHIGON 富山市在住。ロックDJパーティ「LOVEBUZZ」のDJ。インディーロックを中心にプレイしている。