はじめまして、富山地方気象台の木津暢彦と申します。気象庁では、南極地域観測隊・越冬隊として3度、南極で活動しました。タイトルの「観天望気かんてんぼうき」は空の状況を観察し、天気を予測するという意味です。四季を通じた気象の話を分かりやすくお伝えしたいと思います。

ペンギン調査中の筆者。南極・ネッケルホルマネからシェッゲ(スカルブスネス)方面を望む=2018年11月14日

 

防災情報として捉えて

 北のオホーツク海気団と東の小笠原気団のせめぎ合いの度合いが強くなってきました。梅雨本番です。今後、小笠原気団が北上し、日本(本州)はその勢力下に置かれて夏を迎えます。

 私たちはこのような気団のせめぎ合いの下で暮らしています。梅雨を恵みの雨と捉えるか、うっとうしいものと感じるかは、その人の価値観次第ですね。

雨の中、横断歩道を渡る人たち=6月2日午後1時20分ごろ、富山市西町

 気象庁としては「梅雨入り/梅雨明け」の発表を、防災情報の一環として捉えてほしいというのが切実な願いです。地震や降雨続きで土壌が脆弱になっている地域、もしくはもともと脆弱な土地に住んでいる方は、少量の雨でも土砂災害に見舞われる危険があるので要注意です。

 防災という観点からいま一度、各自治体のHPに掲載されているハザードマップを確認し、災害に備えてほしいと思います。

 梅雨明けには、梅雨前線が「北上して消滅するタイプ」と「南下して消滅するタイプ」があります。今年はどのような幕引きになるのか、スパコンを駆使する気象庁でも「梅雨入り/明け」の予想日は非常に難しいのです。

 この機会に梅雨明けを自分たちでも予想してみてはいかがでしょうか。北陸地方の梅雨明けは7月23日頃が目安となります。

昭和基地は冬至

 梅雨という日本を含めた東アジアの一部地域特有の現象をよそに、南半球の南極・昭和基地では太陽が姿を見せない極夜期に入っています。6月21日は日本では夏至でしたが、南半球にある昭和基地では冬至(ミッドウィンター)です。

極夜期に赤暗く染まった昼間の昭和基地=2018年6月18日、筆者撮影

 南極大陸では、このミッドウィンターを祝い、基地間でグリーティングカードを交換します。近くに基地があれば人の交流も盛んになりますが、昭和基地は周囲に他国の基地がないため、昭和基地だけのお祝いイベント「極夜祭」を行っています。

 この時ばかりは基地内に屋台を出し、露天風呂やスポーツの祭典などのイベントを企画し、気分が落ち込みがちな極夜期に隊員が英気を養います。

 しかし基地の外は、寒くて夜の長い極夜期の世界です。この頃は成層圏内の気温も十分に冷えてPSCs(極域成層圏雲)と呼ばれる雲が発生し、日中でも基地全体が赤暗く映ることがあります。この季節は気候変動や成層圏エアロゾルを観測する研究者にとっては“データの稼ぎ時”なのです。

オーロラも出現

基本観測棟前で撮影したオーロラ=2018年3月17日(筆者撮影)

 神秘的なオーロラが出現し、観測も

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