アメリカ上空に飛来した気球が撃墜された。気球は中国のものだった。中国外務省は「気象など科学研究用のもの」と主張しているけれど、軍事偵察目的という見方が強い。気球は丸っこい。飛行機に比べればスピードは遅い。そのせいか、平和的なイメージがある。戦争よりも、冒険が似合う。気球が発明されて240年。今さら軍事用に活用されていることに驚く。何なんだ。この「そうじゃない」感。僕の気球のイメージを返して!

「王国への鍵 その8 -約束-」 坪内好子 (1999年、エッチング、アクアチント、金箔、手彩色、黒部市美術館蔵)
この版画の気球は、そんな現実の物騒なイメージからは遠い。ただただワクワクさせてくれる。古い洋書の表紙のような縁取りが施された画面の中で、気球が木々や畑の上を飛ぶ。気球のカゴには人の姿は見えないが、大きな鍵が載っている。これが本作のタイトルで、マザー・グースの一編の詩に着想を得たという「王国の鍵」なのだろう。
遠近法による現実感は皆無。シンプルな構図とはっきりとした輪郭線が強い印象を与える。中世の宗教画を思わせる平面性と装飾性は、ファンタジーの世界を想像させるだろう。気球が向かう先には、時間も超越するような壮大な世界が広がっているのだ。
作品に奥行きを与えるのが、独特の風合い。版を重ねて刷る際に剥離した金ぱくが古びた輝きを帯びている。気球すら発明されていない何百年も前から存在したかのような空気をまとう。例えば、仏像のような(作家の実家は寺院だ)。
作家は気球に加え、帆船や大型客船、地図、地球儀、異国情緒あふれる城などをモチーフにする。旅を連想させる作品たちは、見る人に平和で豊かな時間を与える。(田尻秀幸)
「コレクション展 夢のつづき、物語のはじまり」
会 場:黒部市美術館
会 期:開催中〜3月12日(日)
休館日:月曜日、2月24日
開館時間:9時30分〜16時30分
(入館は16時まで)
観覧料:一般300円(200円)、
高校・大学生200円(150円)
( )内は20名以上の団体料金
※中学生以下無料
問い合わせ:TEL.0765-52-5011
会 場:黒部市美術館
会 期:開催中〜3月12日(日)
休館日:月曜日、2月24日
開館時間:9時30分〜16時30分
(入館は16時まで)
観覧料:一般300円(200円)、
高校・大学生200円(150円)
( )内は20名以上の団体料金
※中学生以下無料
問い合わせ:TEL.0765-52-5011