−大空さん自身も自殺寸前まで追い詰められたというエピソードをいろいろな場面でお話しされています。1度目はご両親が離婚し、暴力や暴言を繰り返すお父さんと2人で暮らした小学生の時。お母さんと暮らすことになり、その状況を抜け出した。でも、お母さんは収入がなくなり、情緒不安定になった。大空さんは生活費を稼ぐため、アルバイトするという暮らしで精神的に追い詰められたそうですね。
思い詰めて夜中に、担任の先生に死にたいとメールしたんです。目覚めると、先生は僕の家まで来てくれました。母親が学校に届けていた住所は正確ではなかったのに、僕がいつか話したぼんやりとした情報だけで家を突き止めたんです。初めて頼れる大人がいると実感しました。僕は大変な目に遭ってはいるんだけど、ラッキーなことに信頼できる恩師のおかげで問題を乗り越えられた。そのラッキーを確かなものに、奇跡じゃないものにしたい。確実に信頼できる人にアクセスできる仕組みを作ろうと思ったのが活動の始まりです。
−大学で今の活動をスタートしました。これだけ苦労したんだから、「普通の学生生活」を送ってもよかったのでは?

ちゃんと学生生活もしましたし、活動は軽い気持ちで始めました。学生起業と一緒で見切り発車。軽い気持ちだけど、やっていることは重い。我々は自分たちがやっていることを「本気の他人事」と呼んでいる。全くの赤の他人に本気で接するのが支援。自分を最優先しながら、持続的に他人を助ける。社会問題に取り組むって非常にエネルギーがいること。お金を稼げるわけじゃないし、ローンを組めないかもしれない。寄付を求めるなら、慎ましやかでないといけない。だけど、そんな状況でNPOを始めようとする若者はいますか?今のNPOの中心的な世代は50、60代です。それから下の世代はほぼいない。このままだとセーフティーネット無き日本になってしまう。それを避けたい。だからこそ、「特殊能力のない僕でも片手間でできる」って言い続けて、若い仲間を増やしたい。