一歩踏みだす。
それが一番しんどい。
転ぶかもしれない。方向違いなのかもしれない。
他の人の視線が気になる。足がすくむ。
やっぱり、どうかしている。
でも、みんな最初は誰でもなかった。
社会を動かすあの人も、世界で拍手を浴びるあの人も。
ただ不確かなものを信じた。
転んだら起き上がる。間違っていたらやり直す。
意地悪なやつなんて視界から消す。
窓を開ける。冷たい水を一気に飲み干す。
スニーカーの紐をきつく結ぶ。
それだけで、もう一歩踏み出している。

北日本新聞、「希望スイッチ」押します。3、2、1

北日本新聞社は次代を担う若者の皆さんを応援するキャンペーン「希望スイッチ」をスタートします。閉塞感が漂う不確実性の時代を切り開いていくためには若い力が欠かせません。2023年は4月にこども家庭庁が設置され、5月にはG7富山・金沢教育大臣会合も開催されます。こうしたタイミングをとらえ、キャンペーンでは、国内外で注目を集め、時代をけん引する若者たちへのインタビュー連載や、若者の背中を押すさまざまな事業を展開していきます。そして、活力ある地域づくりを目指します。

◎富山の若者意識アンケートはこちら。
https://viewer.webun.jp/books/viewer/app/P000005411/2023/02/22

孤独をなくす
「本気の他人事」

 NPO法人「あなたのいばしょ」理事長
大空幸星(おおぞら・こうき)

2021年。日本で「孤独・孤立担当相」が新設された。この新しい動きの源流に、大空幸星さん(24)がいる。大空さんは大学生だった20年に、チャット相談サービスを無料で提供するNPO「あなたのいばしょ」を立ち上げた。誰にも頼れない孤独に苦しむ人たちから24時間相談が寄せられる。その活動は注目を集め、政府も動かす。(聞き手/田尻秀幸 撮影/鳥飼祥恵)

 

日本の自殺者の数は年間2万人を超えています。その要因の一つとされているのが、孤独に関わる問題です。大空さんは本人の意思によらない「望まない孤独」をなくそうとするNPO法人を主宰しています。どんな取り組みをしていますか?

年齢や性別関係なく、誰でも無料で利用できるチャット相談を行っています。自殺願望や孤独、DV、虐待、いじめ……。あらゆる問題の相談があります。24時間365日対応するため、世界26カ国に約700人の相談員がいます。時差を利用すれば、早朝でも夜中でも対応できますからね。今の若者は電話を使いません。チャットだと、顔を見せなくても、声を出さなくてもいい。例えば家族からDVや虐待を受けているなど、声を出せないような状況でも相談できます。命に危険が及ぶ状況なら、警察や児童相談所につなぎます。1日約千件、過去3年で55万件の相談が寄せられています。

ー経済的な事情やDVなど社会の構造的な問題による望まない孤独もあります。しかし、日本には自己責任という言葉で片付けられる傾向があるのでは?

 

自業自得に近いような、懲罰的な自己責任論が蔓延している部分はあります。孤独について「誰かに相談するのは恥ずかしい」「誰かに頼ったら負け」という感情を持つ人がいる。でも、それは問題を悪化させるだけ。望まない孤独は誰にでも陥る可能性があります。自らの選択で誰かに頼ればいいし、自己を否定する必要はない。最近はようやく若者の孤独死にも目が向くようになった。日本の若者の死因の1位は自殺です。一人暮らしの若者がひっそり亡くなり、発見されずに放置されるケースに、やっと社会的な関心が集まってきました。頼りたくても頼れない、話したくても話せないのが望まない孤独。これがあらゆる問題の源流にある。放置すると、社会問題につながる。孤独によって引き起こされる感情が、心も体も蝕んでいく。自殺につながるし、生きていても健康に影響する。