―「個」を大切にする価値観はどのように培われたのですか?
父はスポーツドクター、母は自営業をしています。経済的に自立し、家事と育児も協力していました。両親から性別に関係なく、仕事や育児、家事をフラットにする価値観が根付いたように思います。そして私は幼稚園からエスカレーター式の女子校に通っていました。楽しくて平和で友だちもいい子ばかり。ただ小さい頃から同じメンバーで同じような価値観を持ち、多様性とは真逆の環境でした。少女漫画や海外ドラマを通じて外の世界を知ると、「このまま居心地のいい所に収まっていいの?」と不安が強くなりました。海外の学校の資料を集め両親にプレゼンしました。小学6年生の頃です。

中学2年生でイギリスの語学学校に行ってからスイスにある学校に通いました。寮生活を送りながら人種や言語、セクシャリティ、宗教など、さまざまな文化に触れました。朝にお祈りをしている子もいますし、食堂にはおすしはないけど、ハラルフードやビーガン料理はあって当たり前。寮生活だからこそ体の不調や事情も違うということも見えてきました。同じ人間でも1人1人違うのが基本で、「個」と「個」で人と向き合いたいと思うようになりました。
―アメリカの高校を卒業し、日本に帰国します。大学生活はどうでしたか?
海外の暮らしで刺激中毒のようになっていたので、新しい気付きや学びに飢えていました。2週間インターンしたベンチャーの広告代理店にそのまま就職したのは、あまりに楽しくて自分の居場所を初めて見付けたように感じたからです。日本は和を乱さず足並みをそろえて進むのをよしとする雰囲気があるじゃないですか? でもやればやるだけ認められてクライアントも喜んでくれる仕事の魅力に引き込まれたんです。この会社で働き、尊敬できる上司と出会ったのが一番の転機です。