
一歩踏みだす。
それが一番しんどい。
転ぶかもしれない。方向違いなのかもしれない。
他の人の視線が気になる。足がすくむ。
やっぱり、どうかしている。
でも、みんな最初は誰でもなかった。
社会を動かすあの人も、世界で拍手を浴びるあの人も。
ただ不確かなものを信じた。
転んだら起き上がる。間違っていたらやり直す。
意地悪なやつなんて視界から消す。
窓を開ける。冷たい水を一気に飲み干す。
スニーカーの紐をきつく結ぶ。
それだけで、もう一歩踏み出している。
北日本新聞、「希望スイッチ」押します。3、2、1
◎富山の若者意識アンケートはこちら。
https://viewer.webun.jp/books/viewer/app/P000005411/2023/02/22
焦燥感をかき立てる。
知らない世界や
可能性に出合いたい
arca代表取締役 クリエイティブディレクター
辻 愛沙子(つじ・あさこ)
クリエイティブディレクターの辻愛沙子さん(27)はデザインやアイデアを武器に社会の問題に切り込み、メディアでは臆することなく自分の意見を述べる。作り手さらに発信者としてメッセージを送り続けることで、世界を変えようとしているからだ。現在に至るまでの道のりとパワフルな生き方を支える原動力を聞いた。

―ニュース番組やSNSで積極的に意見を発信しています。怖くないですか?
言葉選びはとても気を付けていますが、むしろ良かったと思うことが多いです。自分のスタンスを明確にすることで同じ考えの人と出会えるし、違うスタンスの人と対話のきっかけがつくれるからです。おかしいと思うことに対して声を上げるからこそ見える世界は確実にあります。
―慶応大在学中に広告代理店の社員となり、ナイトプールやタピオカ専門店のブランディングなどで次々にヒットを出しました。近年は社会課題の解決に力を入れています。社会課題に目を向けたきっかけは?
入社3年目からメディアに取り上げていただく機会が増え、本の出版のお話が来ました。「女子大生なのにクリエイティブディレクター」というキャッチの提案があり、装丁はピンクにしたいと伝えられました。〝女性ならではの〟という表現のようなステレオタイプを背負わされることに抵抗感と嫌悪感があったんです。私というアイデンティティーが存在するのに、あるカテゴリーにおいて自身を消費されているように感じました。多様性が当たり前で「個」を大切にする、10代から培ってきた感覚とかけ離れていました。ジェンダーの概念は現在ほど浸透していない時期でしたが勉強すると、性別による「らしさ」を前提とした社会のあり方に問題があると、ふに落ちました。女性の社会課題を発信・解決するプロジェクト「Ladyknows」を始めたこともあり、ジェンダー問題に限らずクリエイティブを通じ社会にアクションをしていきたいとの思いが強くなっていきました。

私はアニメ『ふたりはプリキュア』にとても影響を受けています。女の子2人組が白と黒のコスチュームをそれぞれ着て、ヒーローに助けられることなく、自分たちだけで敵を倒すんです。シスターフッドの物語ですね。エンタメから学んだからこそ「女の子なのに」というジェンダーバイアス(性別に基づく固定観念)が生まれず、ガールズヒーローの魅力が自然と残ったのでしょう。教科書的な学びではなく、プリキュアのように心に響く届け方をしていきたいです。