そこで頼れるものは何か。もしかしたら「資格」なのかも。独学で860以上の資格を取得した“資格王”鈴木秀明さん(砺波市出身、東京都在住)に資格を取る意義と魅力を聞きました。(聞き手・田尻秀幸、撮影・鳥飼祥惠)

——資格取得が現実逃避とは、どういうことですか?
高校生の頃、全国模試で富山県内のトップになったことがあるけど、東大に行くと周りがスゴすぎるんです。「こいつには一生勝てない」っていうやつがゴロゴロいる。学業のモチベーションが下がってしまってたので、周りと違うことをやろうと考えて資格ばかり取ってたという側面もあります。
最初は研究者になりたいと考えていたけど、いざ研究室に入ってみると、
自分には向いてないなと痛感しました。論文を読むのも書くのも苦手。潔く諦めました。それで4年生になって公務員志望に路線を変えるんですけど、さすがに対策が間に合わず、「国家公務員Ⅰ種」も都庁もダメでした。
その年、東大に公共政策大学院が新設されたのでそこに進学しました。キャリア官僚の実務が垣間見られる実践的なカリキュラムで面白かったですが、同時に官僚の激務さも実感できてしまい、自分には無理だなと。将来に迷っていたところに、資格に関する本を書かないかという打診を受けました。さらに情報サイト「All About」からも、ガイド就任のオファーがあった。この辺りから「資格で仕事ができるかも」と思うようになりました。
つまり、すごくフラフラした結果、「資格」なんです。でも、結果的には良かったかな。自分には無理だとはっきり自覚した上での軌道修正だから、「もし科学者や公務員になっていたらもっといい人生だったかな」とか考えることはまったくないので。
——資格収集の喜びや意義をどこに感じますか?
コレクター的な感覚なので、集めるのが単純に楽しい。個々の資格をどう生かすかとかはぶっちゃけほとんど考えてません。「取るだけで生かさないなら意味ない」と言われることもあるけど、皆さんも学校で勉強したことをその後の人生で100%生かしているわけじゃないですよね。2、3割くらいが人生のどこかで役に立ったらいいというくらいじゃないですか。僕は「この資格が生きる場面が今後の人生のどこで発生するか楽しみ」くらいのスタンスでやっています。