日本を代表するコスチュームアーティスト、ひびのこづえさんは自身が企画したダンスの2作品を3月25、26の両日、オーバード・ホールで上演する。新作として発表する「TYM」は富山を描く。チューリップに五箇山、黒部、立山連峰、おわら風の盆など、富山の豊かな自然や風物詩を衣装とダンスで鮮やかに切り取る。新作に込めた思いを聞いた。(聞き手・田尻秀幸、写真・齊藤健太郎)

——「TYM」は富山を表現したそうですね。どんな舞台になりますか。

 3人のダンサーが演じる旅人が富山の雄大な自然に触れ、七変化します。これからの季節の富山と言えばチューリップですよね。だから出演者は最初、チューリップハットをかぶっています。携えているトランクをかぶると、おわらの笠のようにもなるし、合掌造りの屋根のようにもなる。服を脱ぐと魚を模した衣装が重ねられていて、最後には風や立山連峰になるという仕掛けもあります。私が富山を訪れて感動したイメージをコスチュームに託しました。

 

 今回出演する陸さんとChikako Takemotoさんは東京五輪のイベントで一緒に映像作品を作りました。2人とも「こんな動きができるのか」という驚異的なダンスでほれぼれさせてくれる。五十嵐結也さんは不思議なバランスの体型ですけど、集団の中でも一番美しく見える表現ができます。

——衣装デザイン以外にもアイデアを出しているのですか。

 最近、自分で企画から作っているんですよ。演劇であれば、劇作家がいて、演出家がいて、ストーリーがあって…。衣装が決まるのは最後という世界です。私はそれを逆転させたかった。まず衣装を作って、ダンサーがどう踊るか想像してます。同時に衣装と響き合うようにストーリーも考えています。

 

 それを基にできた音楽をダンサーに渡し、彼らに自由に動いてもらう。誰か1人のジャッジで決めるのではなく、私と作曲家、ダンサーの三者が独立した立場で作っています。あと、お金のやりくりや出演交渉も全部私。大変です(笑)。

 

——元々服が好きだったんですか。

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