「夢のアール・ヌーヴォー アルフォンス・ミュシャ展」高岡市美術館で9月1日まで

現在のチェコ共和国で生まれ、その後活動の拠点となったフランス・パリで大活躍した画家アルフォンス・ミュシャの没後80周年を記念した「夢のアール・ヌーヴォー アルフォンス・ミュシャ展」が、高岡市美術館で開催されています。ミュシャの作品を一目見ようと、コノコトの親子鑑賞会には約30人の親子が参加。副主幹学芸員の宝田陽子さんの解説を聞きながら、約500点の作品を堪能しました。

「ジスモンダ」1895年 OGATAコレクション(写真左から2点目) 

宝田:ミュシャは、商品や演劇を宣伝するポスターをたくさん描いたことで有名になりました。まず、こちらは、フランスとアメリカで開催された「ジスモンダ」という演劇の宣伝ポスターです。この女性を見て何に気が付きますか?
子どもたち:着物を着ているみたい。
宝田:そう、とても豪華な洋服を身につけていますね。これは舞台の主人公であるお妃様役の女性を描いています。この時代は、着ている洋服で身分を表していたんです。そして、この女性はどこを見ていますか?
子どもたち:上のほうを見てる。
宝田:そうですね。持っている植物を見ていて、その先に演劇のタイトルである「ジスモンダ」と、主人公の名前が書かれています。このように、ミュシャはポスターの中に文字を情報として入れていますが、よく見たときにその文字が目に入ってくるという仕掛けをして、メッセージを伝えています。

商品のポスター

 
宝田:今度は、演劇ではなく、ある商品の宣伝をしているポスターです。この作品(写真右から2点目)は、何のポスターか分かるかな? 
子どもたち:わからない…。
宝田:これは当時のチョコレートの宣伝用のポスターなんです。みんながよく食べているチョコとは違って、当時のヨーロッパではホットチョコレートとして飲んでいたので、カップを持っているんですね。全体的にチョコレートっぽい色もしていますし、カップから立ち込める甘い香りまで感じられます。ポスターは目で見て楽しむものですが、ミュシャはさらに、商品を売るために「これ欲しいな〜」と思わせるデザインが上手でした。

装飾パネル


宝田:さっきまでの作品と違うところは何かわかりますか?
子どもたち:字が書いていない!
宝田:そうですね。ミュシャの作品をお家に飾りたいという人がたくさん増えてきたので、文字を書かずに、絵だけを描いて、版画(リトグラフ)でたくさん作品を刷りました。部屋に飾られることをイメージして、落ち着いた、優しい色使いがされています。女性の雰囲気も、ポスターとは違います。ポスターだけでなく、誰もが買える装飾パネルができたことで、ミュシャの人気はさらに広まっていきました。

装飾資料集、パッケージデザイン

 


宝田:ミュシャは、今から110年以上前の1902年と1905年に、作品の図案集を2冊出版しました。ポスターや装飾パネルとは違い、とても細かい描写のものもたくさん見られます。1日16時間も作品を描いていたと言われるほど熱心で、たくさんのデッサンを積み重ねていろいろな手法を身につけていったことがわかります。この図案集は、多くの学生たちの教科書的な存在となりました。

 

宝田:他にも、チョコレートやビスケットなどのお菓子や、お酒のパッケージデザインも手掛けていました。こうしたことで、みんなの暮らしの中にミュシャの作品があふれ、世界中にミュシャの作品が知られるようになりました。お菓子がこんな素敵な入れ物に入っていたら、みんな欲しくなるよね
子どもたち:うん、欲しい!
宝田:ミュシャと今日来てくれたみんなは、150歳以上も年齢が離れていますが、こうして作品を通してつながることができるというのはすばらしいことですね。自分の感じたこと、分かることから、作品を楽しんでください。

小学3年女子:描かれている女の人がみんなきれいだった。色や植物などで季節を表現しているところがすごい!
小学4年男子:どの作品もとても迫力があって、見ていておもしろかった。お菓子の缶とかもすごくきれいで、僕もほしくなりました。

【お出掛けメモ】
「夢のアール・ヌーヴォー アルフォンス・ミュシャ展」
会期:9月1日(日)まで
会場:高岡市美術館
      富山県高岡市中川1-1-30
      TEL 0766-20-1177
      https://www.e-tam.info
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(8月12日は開館)
観覧料:一般 1,200円(前売・団体・シニア900円)
高校・大学生 500円(団体400円)
小・中学生 300円(団体240円)
親子券 1,100円  *大人1名と小中学生2名までのセット券