企画展「花鳥風月―こころに響く美の世界」は、中部地区最大級の博物館·美術館である光ミュージアム(岐阜県高山市)のコレクションから、四季折々の自然の美しさや日本の美意識を伝える日本画と書、陶芸の傑作47点を展示しています。今回はコノコト会員の親子6組が訪れ、学芸課長の若松基さんの解説を聞きながら、1時間かけてじっくりと作品を楽しみました。



若松:みなさん、花鳥風月という言葉を聞いたことがありますか?

子どもたち:聞いたことがある気がする。

若松:「花鳥」は漢字の通り植物や動物を表わしています。そして「風月」は風と月だけじゃなくて、気象や天文、四季なども表わしています。なので山や自然などを含めて、私たちの身の周りにあるものが花鳥風月ということ。日本の美術は、昔からこの花鳥風月をとても大事にしてきました。この中に、外国で暮らしたことのある人はいますか?

子どもたち:えー、いないよ。

若松:外国には1年中寒い国もあれば、季節の変化が少ない国もあります。でも日本は、春になると花が咲き、夏は海で遊び、秋は紅葉がきれいで、冬は寒いけれどスキーができる。この季節の変化が、日本人の自然に対する考え方につながっているんだね。さあ、作品を見てみよう。

 

「十二客名花双幅」 狩野永岳

若松:みんなは、この中に知っている花はあるかな? 何種類ある?

子どもたち:タンポポ? バラ? 6種類ぐらいかな?

若松:正解は、合わせて12種類。そしたら何時代に描かれたと思う?

子どもたち:江戸時代?

若松:正解。そしたら江戸時代に生きていた人に、会ったことはあるかな?

子どもたち:もう、死んじゃっているよ。

若松:そうだね。でも花がきれいだと思う気持ちは、今も昔も変わらないね。それは素敵なことだと思います。親子で美術館に来られたら、こんな風に自分たちが分かることでいいので、会話をしながら見ていくと楽しいですよ。

 

「四季草花図屏風」 宗達工房

若松:次は大きな作品なので、右から左へ見てみよう。知っている花を見つけたら、いつの季節の花か考えてみて。

子どもたち:ポピーがある。

若松:日本に昔からある花だね。日本の名はヒナゲシと言うよ。

子どもたち:イチゴみたいなのがある。

若松:これはホオズキだね。この作品は、右から順番に季節の花が描いてあります。こちらも江戸時代に描かれました。よく見てみて。絵の後ろのほうにキラキラするものが見えない?

子どもたち:金?

若松:本物の金です。薄く切ったものをパラパラと散らしてあります。そして黒い点々に見えるところは銀です。江戸時代に、こんなことができたのはお金持ちだけ。まばゆい金銀の中に花が咲き誇っていて、描かれた当時はすごく派手な作品だったんだろうね。

 

「牡丹睡猫(ぼたんすいびょう)」 速水御舟

若松:猫はどんな顔をしているかな? 横にある花は何かな?

子どもたち:なんか眠たそう。花は牡丹?

若松:牡丹は、明るくなると開いて、夕方になるとつぼみます。この牡丹は大きく開いているから、何度も咲いたりつぼんだりを繰り返して、風が吹くとハラハラと散ってしまいそうな感じ。
猫は夜動くから、昼間は眠そうなんだね。猫がのんびり眠そうにしているってことは、そこが平和だということ。そしてこの絵では、散りそうな牡丹のそばに猫がいる。これは平和は崩れやすいことを表わしています。この中に、日光東照宮へ行ったことがある人は?

ママ・パパ:はい、あります。

若松:日光東照宮にも眠り猫の彫刻があって、その隣にも牡丹が彫られています。いつまでも平和が続くことを祈って、彫られたと考えられています。

 

「楚蓮香(それんこう)」 佐多芳郎

若松:この絵に描かれているのは、中国の伝説のお姫様です。まわりにチョウは何匹いるかな?

子どもたち:いっぱいいて数え切れない。

若松:女の人があまりにも美人だから、チョウがついてきたんだ。女の人の顔は分かる? 美人かな?

子どもたち:後ろを向いているから分からないよ。

若松:そんなときは、どんな人か想像することが大切。伝説の美人は、今の美人とは少し違う。しもぶくれの顔で、目がピュッと細いのが、昔は美人と言われていました。この作品は、美人の周りにたくさんのチョウが描かれていることで、ふわっと風が吹いているように感じられるね。

 

「夜桜」 加山又造 

若松:この絵の面白さは、展示室の中央まで下がると分かるよ。右に描いてあるのは何だと思う?

子どもたち:火だ。

若松:お正月の初詣などでも見る、かがり火だね。燃えている炎から音が聞こえてきそうだ。

ママ・パパ:すごい迫力。

若松:左は月の明かりに照らされた桜の木だよ。静かな感じがするね。実はこの絵にはトリックがあります。

子どもたち:トリック? 何だか囲まれている感じがする。

若松:気が付いた人がいるね。この絵の前に立つと、囲まれているような気になるんだ。不思議な絵だね。こんなふうに不思議だなと感じる絵に出合ったら、その作品をじっくりと見て、どこに絵の良さがあるかを探し出すことが大切なんだ。これから美術館に来たら、そうやって絵を見てみてください。
 

子どもたち:花や動物を探しながら見るのは楽しかった。おばあちゃんの家にある花も見つけたよ。

ママ・パパ:いつもは、子どもに「早く、早く」と急かされながら見ていたけど、今日は子どもとゆっくり楽しめました。



【お出かけメモ】
「花鳥風月―こころに響く美の世界 光ミュージアムの名品より」
会期:11月4日(日)まで
会場:富山県水墨美術館(富山市五福777)
TEL:076-431-3719   

開館時間:9:30~18:00(入室は17:30まで)
休館日:月曜
観覧料:一般1,200円 大学生900円、高校生以下無料。