富山県サッカー協会は26日、まちなかスタジアム構想について理解を広める狙いでシンポジウムを開き、日本代表監督の森保一氏をゲストに招いた。ワールドカップ(W杯)アジア最終予選を戦っている現役代表監督の登壇は大きな注目を集め、構想実現に向けた署名集めに弾みがついた。森保監督の言葉を中心にシンポジウムを振り返る。

サッカー専用スタジアム構想記事一覧

 県サッカー協会は昨年12月16日、富山駅東側にサッカー専用スタジアムを建設する「とやまスタジアムランド建設計画書(中間報告)」を発表。1月7日からは、「まちなかスタジアムで富山を元気に!」と訴え、賛同を呼び掛ける署名活動を始めている。今回のシンポジウムは「『スタジアム×街づくり』の可能性を考える」と題し、構想実現へ機運を高めるために開いた。

富山駅東側での建設を目指す「富山スタジアムランド」のイメージイラスト(県サッカー協会提供)

 同協会は昨年7月、広島市中心部で同2月にオープンしたサッカー専用スタジアム「エディオンピースウイング広島」を視察している。計画から完成までの経緯をよく知るサンフレッチェ広島前社長の仙田信吾氏を今回の講師に招へい。併せて、かつて広島の監督を務めスタジアム構想にも携わった森保監督が、サッカーを通じた地域貢献について熱心なことに着目して参加を要請した。富山のように都道府県のサッカー協会が主導して専用スタジアムを建設しようとする動きは全国的にみても例がない。日本サッカー協会から手厚いバックアップを受けており、サプライズとも言える現役代表監督の登壇が実現した。

パネルディスカッションでスタジアム建設の意義を述べる森保監督

 開催が発表された今月8日から参加申し込みが数多く寄せられ、予定していた200人の定員に2日間ほどで達したという。署名も26日現在で約1万人が集まっている。シンポジウムの最後には用意されたボードに森保監督自らがサインして署名人の一人となり、構想実現へエールを送った

 基調講演した仙田氏は、エディオンピースウイング広島が完成に至るまでの紆余曲折に触れた。新スタジアムのミュージアムでは、被爆した広島でサッカーが復興の希望となった歴史を発信していることを紹介。新スタジアム完成によって入場料収入が増加し、クラブの経営強化につながっていることも語った。

 今回、森保監督が重ねて口にしたのは「サッカーはまちづくりに貢献できる。スタジアムが街の潤いとなり、宝となり、誇りになる」ということ。2002、03年に選手として仙台に在籍した当時、まだ希少だったサッカー専用スタジアムの「仙台スタジアム(現ユアテックスタジアム仙台、1997年開場)でプレーした経験や、縁の深い広島市と少年時代を過ごした長崎市に昨年完成したまちなかスタジアムを訪れた感想などを交えながら語った。

 

日本代表監督・森保一氏の発言要旨

スタジアムが街の潤いになる 

 富山でもまちなかにスタジアムを建設しようという機運が高まっていると聞いた。私のこれまでの経験を交え、スタジアムができると街が生まれ変わり、さらに良くなっていくという話ができたらと思っている。

 世界におけるサッカーの価値について紹介したい。

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