県内の大学生が地域課題を取り上げる「北日本新聞学生記者クラブ」は、富山県のかじ取り役を選ぶ知事選の候補者の出陣式や演説会を取材した。同じく27日に投開票が行われる衆院選や県議補選高岡市選挙区を含め、今回の候補者は男性のみ。富山大の女子学生2人が現場を見つめ、同世代の若者や女性が選挙に関心を持つために必要なことを考えた。
情報知らせる工夫を 片山菜乃春さん(20)富山大人文学部3年生
小矢部市内で開かれた個人演説会に足を運んだ。集まった約70~80人の支持者は見渡す限り年配の男性で10、20代はほとんどいなかったと思う。自分が立っているのが、少し不自然なくらいだった。候補者は演説で大学発のスタートアップ(新興企業)を挙げ、大学生の私にとって関心を持ちやすい話題だった。もっと若者に向け、アピールして良いと思った。
上市町内であった別の候補者の演説会は、10人ほどの支持者が集まった。ここにも、若者はいなかった。私は福祉政策の知識がないため、「負担を軽減する」との訴えを聞いても、「何の?」と思い、あまり関心が持てなかった。知識が乏しい人にも分かりやすく現状を伝えてほしい。
取材して率直に思ったのは、選挙活動の在り方を変えなければならないということだ。20代を対象とした話は少ないし、わざわざ外に出向き、立ち止まって演説を聞くことも支持者でない限りはしない。20代に向けたトピックがあったとしても、知ってもらえなければ意味がない。演説会場に行かなくても情報を知ってもらえるよう、若者の関心が集まりやすいSNS(交流サイト)を駆使することが必要だと思う。
魅力感じる政策必要 山本明日佳さん(21)富山大人文学部3年生
富山市内で開かれた出陣式を取材した。参加しているのはスーツを着た中年男性ばかりで、若者や女性の姿はあまりなかった。若い女性の自分がいるのは、場違いではないかと感じた。あいさつに立った国会議員ら応援弁士約20人のうち、女性は1人だけ。候補者の演説は片仮名が多用され、理解しづらい、聞きづらいという印象を受けた。
富山市街地で行われた別の候補者の街頭演説も聞いた。報道関係者ばかりで聞いている人が少なく、演説する人の気持ちを考えると、いたたまれない気持ちになった。候補者の政策は福祉や年金といった暮らしに関するものが多く、県の課題に対する具体的な策を打ち出していると感じた。
演説を直接聞き、各候補者がどのような政策を考えているのか、知ることができたのは非常に良かった。一方、どちらも若者が魅力を感じるような政策がないと感じた。大学発スタートアップも起業する人向けで、学生全員が興味があるわけではない。
若者向けの政策がないから、大学生らは政治や選挙をどこか人ごとのように感じてしまっており、それが投票率の低迷につながっているのだと実感した。
県内、20代前半の投票率低迷
県内では若者の投票率向上が課題となっている。過去3回の国政選、知事選で20~24歳の投票率は30%前後にとどまり、いずれも年齢別で最低。全体と比べ約25ポイント低く、最も高い65~69歳を40ポイント前後下回った。
前回2020年の知事選は、半世紀ぶりの保守分裂選などで県民の関心が高まり、全体の投票率は60・67%に上った。65~69歳が77・40%に達したのに対し、20~24歳は33・58%と43・82ポイントの差があった。