富山地方鉄道の鉄道線立山線を巡り、富山県と立山町、富山市は22日、不採算を理由に廃線案が浮上していた岩峅寺―立山駅間を存続させるため、国の支援措置を活用して2027年度から再構築事業に着手することで合意した。立山町での会合に同席した富山地鉄は協力する姿勢を示し、廃線は見送られることになった。
立山線は電鉄富山駅から県内最大の観光地である立山黒部アルペンルートにつながる路線で、年間約30億円の経済波及効果があることなどを踏まえて判断した。今後は国に提出する事業計画を26年度中に策定するため、自治体による財政負担や事業構造の見直し、利用促進策などを検討する。
22日は鉄道線の存廃を話し合っている検討会の立山線分科会を立山町元気交流ステーションみらいぶで開き、再構築事業に取り組むことを確認。立山町は、財政負担額を算出するための経費を補正予算案に盛り込み、町議会12月定例会に提出すると説明した。
また県は、年間約10万人という立山線の利用者がもたらす経済波及効果が28億円に上るとの試算を公表。インバウンド(訪日客)が増加傾向にあることから、5年後の30年には1・5倍の45億円に増えるとの見通しも示した。
再構築事業には運行会社の参画が欠かせず、富山地鉄の中田邦彦社長は「前進だと捉えており、知恵を出し合っていきたい」と、応じる考えを明らかにした。
鉄道線を巡って富山地鉄は、年内に自治体による支援が打ち出されない限り、立山線と本線それぞれの一部を26年11月末で廃止するとしていた。
今回の合意で存廃が固まっていない区間は本線の滑川―宇奈月温泉駅間のみ。自治体側は存続に向けた協議の時間を確保するため26年度の支援を確約した上で廃止判断の先送りを求める方向で調整しており、29日の本線分科会で話し合う。
利用促進へPT発足 立山町長「みなし上下を前提」
22日の会合で県は、立山線の利用促進に向け富山市と立山町、富山地鉄、アルペンルートを運営する立山黒部貫光(TKK)と共に10月、プロジェクトチーム(PT)を発足させたことを明らかにした。利用者や収益の増加につながる施策を検討するという。舟橋貴之町長は会合後、施設整備の費用を自治体が負担する「みなし上下分離方式」を前提に再構築事業を進めるとした。
町は会合で、今年9月に立山駅構内で実施したアンケート調査の結果を報告。アルペンルートを訪れた観光客で、立山線がなければ「訪問していなかった」と答えた人が約6割に上ったほか、1人あたりの県内消費額が交通費や宿泊費などで約7万3千円だった。
町の担当者は「立山駅で降りる観光客数はコロナ前近くまで回復している。観光需要はさらなる増加を見込める」と分析。立山線の収益増に向けた具体案として座席指定や特急料金、沿線住民の運賃割引を挙げた。
県は、廃線対象となった岩峅寺-立山駅間沿線の30年度にかけての斜面防災対策事業についても説明した。舟橋町長は「地鉄が運行継続をためらった最大の要因は(多額の経費を要する)安全対策」と指摘し「県が斜面防災の見通しを示したことは地鉄も心強く感じただろう」と語った。
新田八朗知事は「持続可能性を高めるため、維持管理や財政負担の明確化だけでなく、利用者と収益の増加が重要になる」と語り、TKKの見角要社長はインバウンド誘致などを強化する方針を示した。
<解説>収入増、官民連携が鍵
立山線存続への道筋がついた。富山地鉄に一部区間の廃線を突きつけられた今夏以降、立山町は利用実態調査を、県は斜面防災対策や経済波及効果の試算をそれぞれ実施。赤字路線の維持に公費を投入するための根拠を積み上げ、再構築事業へとかじを切った。
今後の最大の課題は財政負担だ。事業構造の変更や自治体ごとの金額は協議次第ではあるものの、富山地鉄の試算によると、廃線対象とされた岩峅寺―立山駅間で、施設整備の費用を自治体が負担する「みなし上下分離」を導入した場合、年間約1億3千万円の行政負担が生じる可能性がある。
自治体の負担を軽くし、路線の収支を改善するには、運賃収入アップに活路を見いだすしかない。県は利用者を増やすため、立山黒部貫光を含む民間事業者との連携に前向き。官民を挙げた取り組みで、観光路線としてのポテンシャルをさらに引き出せるかが注目される。(和田華奈)