TBSラジオで人気番組を数多く手掛けてきた橋本吉史さん=高岡市出身=がこの夏フリーに転身した。〝ハシP〟の愛称でリスナーにも親しまれる存在で、次のステップに注目が集まる。 スマホの普及や配信環境の整備によって、コンテンツが多様化し、個人でも"生放送"できる時代になった。 これまでの経験を生かし、既存メディアの枠を超えて、 音声メディアの可能性を追求する橋本さんにこれまでの歩みや展望、ラジオへ思いを聞いた。(聞き手・撮影、田尻秀幸)
——そもそも、ラジオに興味を持ったきっかけは何ですか?
僕の世代だと、松村邦洋さんや福山雅治さんの「オールナイトニッポン」ですね。あと赤坂泰彦さんの「ミリオンナイツ」とか。クラスの友達で感度の高いやつらが聴いていたイメ ージがあります。でも僕はそれにつられて聴いていた程度。「ラジオに救われた青春時代」を体験できるほど聴き込んでなかったですが、それ以上にテレビの深夜番組をよく見ていました。
「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」とか大好きで、バラエティ番組を企画するような仕事に憧れていましたね。
就職活動では、テレビ局に受かってたんですよ。テレ朝です。でも、単位が足りなくて内定取消になっちゃった。情けない気持ちいっぱいで実家に電話したら、母がすぐに上京してきた。何をしに来たのかと思ったら、単位をくれなかった先生に現金100万円を渡しにいくって言うんですよ。買収ですよ(笑)。もちろん、させませんよ。
でも、感謝しかないです。これが息子を思う母の行動なんだって思いました。うちは別に裕福なわけじゃないのにね。その夜、狭いアパートで一緒に寝ている母のいびきを聞きながら泣きました(笑)。
——その後の就活でTBSラジオに入ったんですね。
地元・高岡の伝統技術を生かした「ナガエプリュス」のアクセサリーがお気に入り
TBSはテレビとラジオが同じ建物なんですが、規模が違うので基本はテレビの人たちが幅を利かせてるんですよ(笑)。でも、ラジオ番組を作り始めると「ラジオってスゴいメディアだぞ、コレ!」と確信してコンプレックスは一気に吹き飛びました。ラジオは少人数で作るから名前もすぐ覚えてもらえるし、芸能人を含めいろんなジャンルのすごい人たちと仕事ができた。
当時は過激な批評も許されるような媒体だったから、テレビじゃできないような番組もできたし。
——今のメディアの状況はどう見てますか?
過渡期って言われすぎだよね。いつまで過渡期やってんだよって(笑)。もう既に多様化しきって定着していますよ。これからのメディアはいかにマルチにコンテンツを出していくかってだけです。TikTokしか見ない人ばかりなら、これまでラジオとして作ってたものをTikTokで楽しめるようにするとかね。人間は便利さには勝てない。接しやすい方向にコンテンツを提供していくしかない。
でも、だからこそ受け手にとって新聞とかテレビ、ラジオのような既存のメディアが重要になると思います。自分にとって快適なメディアで好みのものばかり見てると偏っちゃう。お金を払ってでも、自分でリテラシーを高める努力が必要になリます。
——最近は富山にもよく帰ってきてるみたいですね。
フリーになって時間調整しやすくなりましたからね。若い時はとにかく東京に出たいという気持ちでしたが、大人になるにつれ富山がいかに魅力的か分かりました。食、自然、伝統、文化、どれをとってもポテンシャルが高い。
北陸新幹線が開通した時は、東京にいるアーリーアダプターな人たちが金沢の話ばかりしていた気がするけど、最近は「富山いいよね」と言っています。今後もラジオの可能性を広げる仕事はライフワークですが、